平昌の裏で...。東京五輪のホープ・池江璃花子が日本新を連発していた (3ページ目)

  • 田坂友暁●取材・文 text by Tasaka Tomoaki
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

「このままでは、いけない」と、池江の闘争心に火がついた。遅いかもしれないけれど、今からでも頑張ろう。そんな気持ちで、世界水泳選手権後の練習を必死にこなした。

 その成果は、世界水泳選手権から約1カ月後の世界ジュニア水泳選手権ですぐに表れた。出したくても出せなかった自己ベストが、50mバタフライで出せたのだ。さらに9月の愛媛国体では、屋外プールという環境に加えて、台風18号の影響もあるなか、50m自由形で日本新記録を更新する。愛媛国体のレース後に見せた笑顔は、2015年に中学生で日本代表入りを果たしたときに見せた、水泳が楽しい、と話すときの池江の表情だった。

 夏のレースシーズンが終わり、冬場のトレーニング期に入っても、池江は昨年のように気持ちが切れることはなかった。

「昨年の夏以降、すべての練習に対して、気持ちや態度を緩めないようになりました」

 一つひとつの練習で手を抜かず、最後までやりきる。言葉で言えば簡単だが、特に朝から晩まで自分を追い込む日々が続く冬場のトレーニング期は、精神的にも肉体的にもきつくなっていく。そんななかで気持ちを切らさず、自分を追い込むのは非常に困難だ。どこかで「今日は、ちょっと気を抜いていいかな」という日が出てきてもおかしくない。

 それでも、もう世界水泳選手権のときのような悔しさを味わいたくないという気持ちが、池江を奮い立たせた。もう一度、心から水泳が楽しいと言えるようになるために。

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