水泳でも賞金を稼げる大会。松田丈志が語る「競泳W杯はここが面白い」 (4ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Enrico Calderoni/AFLO SPORT


 もうひとつ、今回私が注目しているのは、競泳日本代表・平井伯昌(のりまさ)ヘッドコーチによるナショナルチームの下半期強化の改革がどういう効果を上げるかだ。

 平井コーチは世界水泳後、ナショナルチームとしての活動を年間通してできるようにしたいと語っていたが、実際このシーズンオフから実行している。10月には測定をメインにした合宿をJISS(国立スポーツ科学センター)や鹿屋体育大学で行ない、さまざまな科学的データを測定した。

 これらのデータは選手たちが今の自分を客観視し、課題を明確にする意味でも重要だし、日本水泳界として、トップスイマーのデータを蓄積していく意味でも重要だ。

 さらに11月は和歌山での1週間、合宿とレースを行なって東京W杯に挑む。今後はナショナルチームとして、スペインでの高地トレーニングとローザンヌでの大会出場も計画されている。

 ちなみに今までの代表チームの活動は、代表が確定する4月の日本選手権から、世界水泳やオリンピックが開催される8月頃までだった。ほぼ年間の3分の1だ。それ以外の期間は所属チーム単位での強化が基本になる。これでは年間を通した代表チームとしての選手強化はできないし、若い選手にこれまで日本水泳界が蓄積してきたノウハウを伝えていくにも十分な時間は取れないだろう。

 これまでの代表期間は、目の前に大事な大会が控えているタイミングであるから、じっくり話をしたり、強化方法や技術を大幅に変えられるタイミングではなかった。しかし、今回はコーチ同士もこのシーズンオフだからこそ落ち着いて意見交換もできるはずだ。実際に合宿を行なってみて、平井コーチは選手たちが世界水泳後、久しぶりにナショナルチームとして顔を合わせて嬉しそうにしていたと語ってくれた。

 社会人選手はこのオフシーズンにナショナルチームとしての活動がなければ、正直時間を持て余すこともあるだろう。逆に高校生など若い選手たちは、代表チームから離れる期間が長くなれば、どうしても考える目線が下がってしまいかねない。

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