選手が別人のようになっていく。松田丈志の見た世界ジュニア選手権 (4ページ目)

  • 松田丈志●文・写真  text & photo by Matsuda Takeshi

 平泳ぎの大崎威久馬選手は出場した決勝種目に地元アメリカの選手がおり、その大歓声に面食らったと言っていた。国際大会であれば、自国の選手が出てくれば会場全体が一体となって大歓声を送る。これも世界大会特有のものだ。国という大きな括りで応援できるからこそ会場が一体になるわけで、これが大学対抗やスイミングクラブ単位での大会ではここまでの一体感は出ないだろう。

 小嶋美紅に次いで400m個人メドレーで銀メダルを獲得した佐々木杏奈選手は、メダル獲得後、たくさんの友人から祝福のメッセージが来た。その連絡に喜びを感じたという。「次の種目も応援しているよ」という内容も多く、また頑張らなきゃ......と思ったそうだ。

 国際大会で結果を出した後、たくさんの人から祝福の言葉をもらえるのも、選手として嬉しい瞬間のひとつだ。私も「こんなにたくさん連絡がきて、どうやって返信するんだよ」と思いながらも、多くの人が喜んでくれるのは、自分も嬉しかったし、努力が報われたと感じる瞬間でもあった。

  女子自由形の中長距離に出場した小堀倭加選手は、なんと初めて飛行機に乗って、初めての海外で、もちろん初めての海外試合だった。それだけで緊張していたのに、遠征中は池江璃花子が同部屋で、池江と話すのも初めてで、それにも緊張したという。緊張から遠征の前半は体重が落ちたというが、池江やチームメイトたちと過ごす時間が増えるにつれ緊張も取れ、見事に復調した。

 400m自由形では決勝で4位に入り、4分09秒59の自己ベスト、日本高校新記録を更新した。世界ジュニアで決勝に残り、自己記録を更新できたことで、自分も世界の舞台で戦えるかもしれない、戦いたいと思ったという。遠征前は飛行機に乗るだけで緊張していた選手が、自分の結果と周りの選手たちの活躍にも刺激され、遠征の最後には東京五輪でメダルを獲りたいと語ってくれるまでになった。

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