松田丈志が提言。「世界の進化は早い。日本も成長スピードを上げる必要あり」 (4ページ目)

  • 松田丈志●文・写真 text & photo by Matsuda Takeshi


 男子200m平泳ぎと200m個人メドレー、200mバタフライは各選手が自己ベストと同じタイムか僅かに更新すれば、金メダルが獲れていた。今後も自己ベストを出さずに金メダルを獲れることはほとんどないと思わなければならない。

 どうしたら決勝でベストパフォーマンスができるのか。これは永遠の課題だ。人それぞれ克服するべき課題も違うが、決勝でベストパフォーマンスができる確率を上げていくしかない。「確率」を上げていくには、代表チーム内で、経験と情報の共有が必須だ。これまでも日本代表チームは所属の垣根を取っ払い、経験と情報の共有を行なうことで選手のベストパフォーマンスができる確率を上げてきたが、今後より一層その取り組みが必要という事だ。人はトライアンドエラーを繰り返し、実践を通して学んで行くが、経験と情報を共有することによって、貴重な時間を節約できる部分もあるはずだ。その積み重ねが確率を上げていく。

 また「チームジャパンで戦う」ことは若手有望選手や新たなコーチングスタッフを育て、「成長のスピードを上げる」という意味でも必要だ。今回メダルの期待もあった池江璃花子は個人種目では決勝に進めなかった。それは自己ベストを更新できなかったことが大きいが、では、なぜ自己ベストを今大会出せなかったのか。

 大会前に何度か取材をさせてもらったが、自分でも十分な練習ができているか自信がないといったコメントをしていた。やはり、そういう状態で戦えるほど世界は甘くない。彼女は今回、国内での調整を優先した。世界水泳前に国内でのトレーニングの様子を見させてもらったが、彼女のモチベーションが少し下がっている印象を受けた。また、彼女が戦うべき世界のトップスイマーや、日本代表の先輩たちはもっと自分を追い込んでるぞ、とも思った。

 今回の代表でいえば、池江の他にも長谷川涼香や牧野紘子など、今後期待したい若手のスイマーがいるが、彼女たちの成長のスピードを上げるには、世界で戦うアスリートとはどういうものかを日本の先輩たちが感じさせていくことも重要だ。

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