松田丈志から日本競泳陣へ。
「東京五輪で大歓声を浴びるのは君たちだ」

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi photo by Kyodo News

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 男子50m背泳ぎ決勝に出場した古賀淳也は銀メダルを獲得した。

 彼は金メダルだけを目指していたので、レース後は終始悔しそうだった。しかし、世界のスプリンターが集まるレースのなかで、スタートから浮き上がりでリードを奪うテクニックと25m付近まで前に出たスプリント能力はさすがだ。25m以降の泳ぎは、タイムを上げるべく予選、準決勝よりテンポを上げたが、そのぶん動きがバタついてしまい、少し身体が沈んでしまったように見えた。

 この辺りが50m種目の難しいところだ。ただ、テクニックへの強い探究心と、スプリント能力のポテンシャルの高さは改めて示したわけだから、今後のレースに繋げていってほしい。

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 400m個人メドレーに出場した大橋悠依は、2日目に行なわれた女子200m個人メドレーで銀メダルを獲得していた。その好調さと、400m個人メドレーが本命種目であることから期待されたが、自己記録から3秒遅れる4位という結果だった。

 レース後、本人に200mの時と何か違ったところがあったのか聞くと「200mが終わってから、なぜか日に日に疲れてきちゃって」と目に涙を浮かべながら語ってくれた。

 200mのレースからこの最終日の400mまで中5日。初めての世界大会で大幅なベストを出しメダル獲得をしたのだ、レース後は達成感も喜びもあっただろう。たくさんの祝福の言葉も届いたはずだ。そのなかで、気持ちを切らさずにいること自体難しいと思う。しかも、6月から日本を離れ、合宿とレースを続けてきた。その疲労感は気持ちに隙ができた瞬間に襲ってくる。大橋にとっては8日間で行なわれる国際大会自体が初めてだったわけだし、この長丁場の遠征と長い大会期間の中でメリハリをつけた気持ちのコントロールは今後、世界で戦っていくうえで良い教訓となっただろう。

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