松田丈志から日本競泳陣へ。
「東京五輪で大歓声を浴びるのは君たちだ」

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi photo by Kyodo News


 悔しさを隠さなかった瀬戸だったが、それでも今後、この経験が自分にとってプラスになると思うと、最後は持ち前のポジティブさで語ってくれた。

 萩野は最初の50mこそ先頭でタッチしたが、その後は常にリードを許す展開で、最終的に6位に終わった。

 今回の萩野を見て、つくづく思うのは「ないものは出ない」ということだ。試合期間中少しでも記録を縮めようと、必死にテクニックやメンタルを整えている萩野の姿を見てきた。

 しかし、ないものは出ない。

 苦しいシーズンだった。昨年9月に右肘の手術をし、トレーニングの時間が十分に取れなかった。トレーニングが十分に積めなかった影響は、これまで豊富なトレーニングを積んで結果を出してきた萩野だからこそ、より大きかったのだと思うし、完璧を求めたい彼にとっては精神的にも自信を持てなかったのかもしれない。

 手術の影響は体力的にもあったが、テクニック的にも微妙な違和感、左右差などを感じることはあると本人はいう。そんななか、よくやったと思う。

 体力的なものは今後、時間が解決してくれると思うが、テクニック的なことはずっと向き合っていくこととなる。これから時間をかけて、今の自分にできる最高の泳ぎを模索していってほしい。

 また彼にはもっと水泳を楽しんでほしい。水泳を通して広がっていく人間関係や体験は貴重なものだ。今の彼だからこそできる経験を積んでいけば、選手としても人間としても強みが増していくと思う。その辺りのことは次回掲載予定の世界水泳総括でも書きたいと思う。

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