泣き崩れる萩野公介に胸熱。
ひとりで背負うな、あと1レース頑張れ!

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi  photo by Kyodo News


 今回の渡辺は大会開幕前から、明確なプランを語っていた。それは予選と準決勝で異なるレースプランを試すということだ。その目的は、ライバルにいろいろなレース展開ができるんだぞと示すことと、自分自身が決勝に向けてベストのレースプランを探ること。今回の渡辺はそれを実践し、決勝でも力を出し切るレースをしてくれた。

 一方の小関は前回の世界水泳を経験し、迎えたリオ五輪の200m平泳ぎ決勝では、前半からガンガンに攻めてリードを奪うレースをしたが、それは「飛び出し過ぎ」だった。積極的に攻めたと言えば聞こえはいいが、自分の力以上の飛び出しは無謀なレースになるし、「玉砕」してしまう。

 昨年までの小関は試合が近くなると、周りを寄せつけない雰囲気を醸し出していた。私は積極的に彼と話すようにしていたが、話すと、水泳に対する熱い思いが伝わってきた。だけど他のチームメイトとのコミュニケーションはそんなに多くなく、ひとりで行動していることも多かった。今大会はレース以外の時の表情も柔らかくなり、チームメイトやスタッフと談笑する姿をよく見かけた。

 昨日のレースも、昨年同様に前半からリードを奪う泳ぎをしたが、力み具合がまったく違った。小関にとっては同じ種目に渡辺がいることもプラスに働いたと思う。1人で頑張らなきゃと思っていた彼が、渡辺とともに成長していこう、ともに日本の平泳ぎを強くしていこうと語るようになった。

 今大会では50mでは準決勝、100mでは決勝まで進んでメダル争いをしていた。世界の舞台で心も体もコントロールできるようになった彼は200mの決勝でも自分の力を出し切れた。

 2人にとって、このメダル獲得は非常に大きな一歩だ、速いタイムを持っている彼らだからこそ、世界の舞台で何度も結果が出ないと「俺は世界では活躍できない人間なのか」と思ってしまう。自分でそう決めつけてしまうことが一番怖いことだ。

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