8位通過から銀メダル。平井コーチは
「あれが大橋悠依なんですよ!」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 新華社/アフロ●写真

 さらに準決勝では、「できればここで自己ベスト(2分09秒96)を更新しておきたかったんですが、前半はしっかり入れているし、泳ぎに関しても気にするところがない感じで落ち着いています。最後のフリーは隣のシボーン・オコーナー(イギリス・自己ベスト2分06秒88でリオ五輪2位)が近くにいたので、自分も油断したかなと思う」と平然と話していた。

 初めての世界大会。少しでもメダルを意識していたら、3位と1秒近く差がある8位通過は焦りを感じて当然だ。だが平井コーチは「彼女は流しの天才だから」といい、本人も「最後のフリーは流したというか、思い切り行ってはいなかったです」と笑いながら答えていた。さらに大橋は、「(準決勝の)150mまでのラップを見ても状態は悪くないのはわかっていたし......。逆に8位通過すると、決勝の選手紹介は最初に入場できるので、スタートまで時間があるとか、8レーンだから周りを気にせず泳げるという風に捉えていました」と、その状況をプラスに考えていたのだ。

 まさに平井コーチが「あれが大橋悠依なんですよ!」という"大物感"ともいえる度胸のよさ。決勝のレースではそれを存分に発揮した。

 最初のバタフライは「練習ではずっと7秒台で入る練習をしていたんですが、日本選手権でもジャパンオープンでもできていなかった。それをこの世界選手権で実現できたのはすごくうれしい」と言うように、3番手につけた。そしてそこから落ちることなく、背泳ぎ(32秒62)、平泳ぎ(37秒34)と泳いで、3位以内を確実にすると、最後のフリーでは、30秒28のベストラップで2位に上がり、自己記録を2秒以上更新する2分07秒91の日本記録で銀メダルを掴み取った。

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