シーズンを出遅れたプロスイマー萩野公介。「今の体で戦うだけ」 (5ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 二宮渉●撮影 photo by Ninomiya Wataru

 萩野にとって今回の日本選手権は、彼の水泳人生の中でも初めてといえるような苦しみの中で戦う大会になっているのだろう。リオ五輪前年、そして昨年も右肘のケガの影響で、合計6カ月間練習ができなかった。20年東京五輪に向けて必要なこととはいえ、そのブランクは「いくら萩野といえども厳しい」と平井コーチは言う。

「まともに練習ができるようになったのは1月の2週目くらいからだから、普通のシーズンでいえば今は11月か12月くらいの感覚だと思います。あと何レースかやっていかないと、緊張感のある試合の中でのキツさのようなものは身につかないのかなと思います。トレーニングはちゃんとできたとしても、見えない部分ができ上がっていない感じですね」

 そんな状況は萩野自身も承知していて、「もちろん修正できる部分はしていきますが、どうのこうのと言っていられる状態ではないので、この大会は今の体で戦うだけかなと思います」と、覚悟を決めたような表情で言う。

「1分47秒(200m自由形)は遅すぎてビックリした以外ないですけど、タイムというよりは人との勝負が今の僕の中では非常に大きな部分を占めている。勝ってもタイムが悪かったら喜べない部分もありますが、昨日のようにいい勝負をしたり、それぞれの種目のスペシャリストたちに全身全霊でぶつかったりすることも大事。一本一本のレースで自分の全力を出し切ることが、今は一番大事だと思います」

 苦しむ中での勝利やライバルとの競り合いが、自分をさらに成長させる大きなエネルギーになると信じ、戦い続ける。その本当の成果が出るのは、7月にハンガリーのブダペストで行なわれる世界選手権なのだろう。

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