日本シンクロ女子。「恐怖の練習」で取り戻したチーム銅メダル (4ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by JMPA

 ただ、井村のきつい言葉の裏には愛情が満ちている。銅メダルが決まった直後、井村は選手にちゃんと「アメ」を与えた。「よかったね」とだけ、たったそれだけだったが、選手たちからすればすべてが報われる一言だろう。

「『あなたたち、(五輪の)メダリストになっちゃったね』と言いました(笑)。印象的だったのは、(デュエットでも銅メダルを獲得した)乾だけが、ものすごくほっとした顔をしていたことです。泳ぎ切った後、他の子はドキドキした顔をしていたのですが、乾だけは泳ぎ切って私のところに戻ってきて、顔を見るやものすごくほっとしていた。あらゆる面で責任を感じていたんだな、と。そういう意味で乾は本当の一流選手になったと思います」

 前述の吉田はいう。

「本当につらいことの方が多かったし、楽しいことなんてほとんどなかったけど、メダルという大きなものを手にすることによって、これまでいろんなことを犠牲にして、しんどい練習をしてきてよかった。(井村)先生についていってよかったなと本当に思います」

 井村の復帰によって、日本はお家芸復活の一歩を踏み出した。4年後の東京五輪では、さらに輝くメダルを期待してしまう。その意気込みを訊かれた吉田は、一瞬の間を置いて、こんな言葉を口にした。

「吐き気がします(笑)」

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