日本シンクロ女子。
「恐怖の練習」で取り戻したチーム銅メダル

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by JMPA

 いまスポーツの世界では、若いアスリートたちとの接し方に指導者たちは頭を悩ませている。昭和の時代のように、厳しく追い込めばすぐに競技から離れてしまう。「叱って鍛える」のではなく、選手の自主性を重んじ「褒めて伸ばす」が概ね主流になりつつある。井村の指導は、時代を逆行するようにも映る。そのことを井村にぶつけた。

「そういう指導者は無責任です。あの子たちは今回、メダルを獲れた。それで私の責任は果たせたと思います。それが私の責任の取り方です。むちゃくちゃ強引に指導しました。むちゃくちゃ強引に指導して、あの子たちには合わないかもしれないですけど、『ここまで練習しなければメダルには届かないんだ』ということを伝えて、強引にあの子たちを引っ張りました。それであの子たちはついてきた。まだまだ私との距離はあったけど、なんとかついてきた」

 井村は「強引」という言葉を何度も繰り返した。その中身とは何なのか。

「練習で本人たちが『しんどい』と言っても、『しんどいと決めるのは私や』と。私もプロ。あの子たちにどれだけ練習をやらせたら病気になるとか、倒れるとかは、わかりますから。そのギリギリの路線をやったというところですね」

 報道陣を前にした井村の独演会は続いた。現代のスポーツ界に敬遠されがちな井村の指導法に、賛否があるのは当然だろう。スポーツの現場におけるしごきは、選手だけでなくその家族や所属先や周辺の人々の反発を招きかねない。一歩間違えば、パワハラである。

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