不遇な時代を乗り越えて。
金藤理絵「金メダル」の準備はできていた

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 金藤は記録だけではなく精神的にも成長し、心身ともに金メダリストになりうる準備が整っていた。

 そんな金藤の成長をすぐ近くで見ていた加藤コーチは、「あいつはずっと、鈴木や渡部には勝てないものと思い込んでいたんです。本当にわがままで、勝ちたいという気持ちを持っていないし、勝てるとも思わないような子が、よく五輪で金メダルを獲ってくれたと思います」という。金藤が「決勝直前に加藤コーチが何か言ってくれたのかもしれないけど、聞き流しました」というような、ほかの師弟関係とは少し違う選手とコーチの関係なのだ。

 だが最後のレースを前に信頼したのは、10年間も指導を受け続けた加藤コーチの考えたウォーミングアップ法だった。わがままを言い、「嫌だ」といってへそを曲げることもしょっちゅうある。それもまた、互いに信頼しあっている証だ。

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