不遇な時代を乗り越えて。金藤理絵「金メダル」の準備はできていた (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 それでも加藤コーチに説得されて現役を続行したが、力をつけてエースとなってきた渡部にはなかなか勝てなかった。そして昨年8月の世界選手権では、渡部が優勝してリオ五輪代表内定を決めたレースで6位。3位が3人同着という、表彰台に5人が上がる珍しい光景の中に、参加することもできなかったのだ。

 金藤はここがターニングポイントになったという。

「順位やタイムより、消極的なレースをしたことが悔しかった。もしあの時、下手にメダルを獲っていたら、今の自分は絶対になかったと思います。本当にあの時の結果でスイッチが入りました」

 ここから、加藤コーチの指導で厳しい練習に再び取り組んだ。それまでの持ち味だった、持久力を前面に出した大きな泳ぎのスタイルを、前半からスピードを上げるスタイルに変更。この成果が今年2月にオーストラリアで行なわれた3カ国対抗での、日本記録樹立につながった。そして4月の日本選手権ではその記録を2分19秒65にまで伸ばし、リオの金メダルを視野に入れるまでになっていた。

「19秒台を出して金メダル候補になったと言われることが、プレッシャーにならなかったといったら嘘になります。でもそういう期待は全員が全員されるわけではないと思うし。『やっと期待されるような選手になれたんだ』と思って、この4カ月間をやってきました」

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る