不遇な時代を乗り越えて。
金藤理絵「金メダル」の準備はできていた

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 前日の予選と準決勝は不安が残る出来だった。予選は2分22秒86で、加藤健志コーチが「2分20秒台を出して他の選手にプレッシャーを与えておきたい」と目論んだ準決勝も、テーラー・マキオン(オーストラリア)に次ぐ2位通過の2分22秒11にとどまった。

 加藤コーチはこう振り返る。

「準決勝は、キックがかかっていなくてダメだったんです。普通の試合間隔だと準決勝では予選の泳ぎを体が覚えているんですが、今回は9時間も開いたので、それがなくなっていました。『大きく、速く、強く』というのがガクッと崩れてしまったから、決勝前のウォーミングアップはいつもなら1000mのところを、3000mやらせたんです。最後にこれではダメだと思って25mを思い切り行かせたら、やっとキックが効くようになったんです」

 決勝レースの作戦も、「落ち着いてスタートして50mまではだんだん上げていき、その後は思い切り行け」というものだった。

 そんな指示を受けた決勝の泳ぎも、日本記録(2分19秒65)を出した4月の全日本選手権の時のようなキレがあるものではなく、伸び方にも物足りなさを感じた。

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