まだ25%。メダル奪還へ日本シンクロがに挑むゾッとする猛練習 (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  中村博之/PICSPORT●写真 photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

 テーマは『AMATERASU~輝く夜明け』、日本の神話「天照大神」をモチーフとした、いわば「日本再生」をアピールするものである。選手たちが音楽を意識したため、少しは落ち着いて泳ぐことができたようで、「足の上がりの同調性は昨日(FR予選)よりマシだったかなと思います」と井村HCは褒めた。

 独創性で勝負する新プログラムには、難度の高い6種類のリフトが含まれている。ハイライトは逆立ちをした中村麻衣を持ち上げて、高く跳ね上げる大技である。土台の選手がバランスよく力を加え、中村が体の軸をしっかり決めて、真上にくるくるひねりながら飛んで落ちなければならない。

 ここでは、ジャッジも観客もハッと目を見張ったことだろう。この日の中村のひねりは1回転半止まり。でも、ほぼ真っすぐ飛んだ。中村が「オリンピックにつながるリフトができたんじゃないかなと思います」と笑えば、井村HCも「この路線で攻められるんじゃないかな。(土台の)彼女たちはまっすぐ上げられたし、中村もまっすぐ受けるという感覚は得られたという、すごく大きな収穫があります」と手応えをつかんだ。

 メダルを失った屈辱の2012年ロンドン五輪のあと、14年、井村HCが日本代表に復帰した。長いときには1日12時間ともいわれる厳しい練習を積み重ね、選手たちはたくましくなってきた。世界の勢力図をいえば、ロシア、中国と続き、3番手を日本がウクライナと競っているところだろう。そのウクライナに3月のリオ五輪予選のチームで僅差ながら敗れた。そこで、プログラムを変えての挑戦である。

 得意の同調性とスピード感、技術を存分に生かす構成となっている。元中国雑技団の幹部を招き、日本が不得手だったリフトの高さと正確性を磨いてきた。選手個々も成長してきた。昨年のこの大会では3日間で全4種目、10回の演技をして、「しんどい」と泣いていたエース乾も変わった。

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