瀬戸大也金メダルも、日本男子水泳に必要な「リオ五輪戦略」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫/フォートキシモト●写真 photo by Fujita Takao/PHOTO KISHIMOTO

 翌日の決勝は4位までが52秒台を出すなか、入江は得意の後半でも伸びきれず53秒10で6位。「泳ぎもまだハマッていないが、スタートから離されないようにしようと意識しすぎて力んでしまった部分もある」と振り返った。

 その心と泳ぎのズレは200mでも修正できなかった。予選、準決勝ともに1位通過で好調さを見せつけるラーキンに対し、入江は予選2位通過だったが準決勝は6位。決勝では自信を取り戻そうという決意を見せるような積極的な入りをして100mまでトップを保持したが、150mでラーキンにかわされると得意なはずのラスト50mで失速して4位にとどまった。

「去年のベストタイムを出していれば100mも200mも優勝できていた。それを考えると、自分が弱かったということにつきると思う」

 こう話す入江の自信の裏付けは、タイムという数字だったのだろう。だが五輪前年の世界選手権でレベルを上げてくるライバルの進化への対応までは十分に意識できなかった。そういう点では心の準備不足とも言える。

 そんな入江と同じように自信をライバルの進化にくじかれたのが、世界ランキング1位の平泳ぎ200mでは「世界記録を出して優勝」と口にしていた小関也朱篤(こせきやすひろ・ミキハウス)だった。最初の100mも大会前の世界ランキングは5位で「メダル争いに絡める」という思惑があったはず。

 予選では4月に57秒92の世界記録を出していたアダム・ピーティ(イギリス)が大会記録の58秒52で泳いだのを筆頭に、6人が小関のシーズンベストの59秒73を上回る結果に。そのため準決勝では前半の50mで21ストロークも掻く力んだ泳ぎになり、敗退した。

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