五輪の金メダルが見えた!世界水泳で証明した渡部香生子の強さ

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫/フォートキシモト●写真 photo by Fujita Takao/PHOTO KISHIMOTO

 そんな落ち着いた泳ぎは、7日の200m平泳ぎ決勝でさらに磨きがかかった。スタートの浮き上がりから3ストロークでリズムを作ると、4ストローク目からはピタリと型にハマッたような安定した泳ぎに。そして準決勝の時のように少し遅れてしまうこともなく、最初からメダル圏内に食い込む入りをした。

 記録的には、今年の日本選手権で2分20秒90を出している渡部に対して、2分19秒台を持っている選手が2人いる状況。それでも大会前に「優勝の確率は7割ある」と考えていた竹村コーチは、決勝に向けて渡部に作戦を授けた。2分19秒台の記録を持ち、前回チャンピオンのユリア・エフィモア(ロシア)が予選落ちするという追い風も吹く中で、準決勝トップ通過で、もうひとりの19秒台スイマーであるリッケ・ペダーセン(デンマーク)をマークさせたのだ。

「ペダーセンは、準決勝でも最後37秒55かかっていたが、それは流したのではなく相当きつくなっていたのだと感じました。でも香生子は本当にへばっていても、最後36秒7で帰って来られる。だから、『前半を1分08秒5くらいで入って、ペダーセンが前にいればついていけ。150mでそんなに離されていなければ勝てるから、最後は死に物狂いでいけ』と話したんです」

 そんな指示通りに渡部は前半を2番手の1分08秒37で入り、ペダーセンとは0秒95差。150mでは0秒88差につめると、折り返してからはペダーセンが予想以上に崩れた。ラスト25mでは完全に並ぶと、そこからテンポを上げた渡部が抜け出して優勝を確実にした。そして最後は、2位に上がってきたミチャ・ローレンス(アメリカ)に1秒29差をつける2分21秒15での初優勝を果たしたのだ。

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