星奈津美、金メダル獲得。自覚した「リオ五輪金メダル」への責任感

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫/フォートキシモト●写真 photo by Fujita Takao/PHOTO KISHIMOTO

「世界選手権の代表になるのは厳しいかなと思っている中で、平井先生にはドンドン強くしてもらって……。先生も今回は気を遣って、あえて金メダルとは言わないでくれていたと思うので、金メダルを獲って恩返しをしたいなという気持ちが密かにありました」と星は語った。

 その夢が実現した一方で、次への厳しい戦いも意識し始めた。早めにリオ五輪内定をもらえたことで、誰よりも早く強化に入れるということは、それを結果につなげる責任感も伴うものであると星は言う。

 そう思う彼女の心の中には、今回の金メダルが運に恵まれたものだという自覚もあるからだ。12年ロンドン五輪と13年世界選手権はともに2位で、昨年は世界ランキング1位だったミレイア・ベルモンテ(スペイン)は肩の故障で欠場し、13年世界選手権3位だったカティンカ・ホッスー(ハンガリー)は多種目に出場していて準決勝で敗退したからだ。さらに中国勢もロンドン五輪優勝の焦劉洋(ショウ・リュウヨウ)や、世界記録保持者で13年世界選手権優勝の劉子歌(リュウ・シカ)はいなくなったが、17歳の張雨霏(チョウ・ウヒ)が今回3位と力を伸ばしてきた。平井コーチも「これで来年も簡単に金を獲れるわけではない。2分03秒台を出さなければ獲れないのではないかと思う」と言う。

「まだまだやれることは沢山あるけど、星は本当に芯が強いですから。みんながクロールでやるメニューを全部バタフライでやるのは本当にきついけど、『よくこんなのができるな』と思うくらい頑張りますよ」と平井コーチも脱帽する星。彼女が心の中に秘める本当の戦いは、この世界選手権の金メダルから、もう始まっている。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る