日本シンクロ復権へ。「本当に強い国」への第一歩

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫/フォートキシモト●写真 photo by Fujita Takao/PHOTO KISHIMOTO

 事実今回のデュエットでは、互いにバラバラな動きをして伸びやかに演技するウクライナのスタイルが評価された部分がある。また、初めて実施されたミックスデュエットのフリーでは、しなやかな動きでドラマチックな表現をしたロシアが優勝した。今後ミックスデュエットは競技として定着してくれば、これまでにはなかったような質の演技が、女子でも評価されるようになる可能性もある。井村コーチの言う「すべての面で負けるものはないようにしなければいけない」という言葉の裏には、そういう面まで心を配っていかなければいけないという意識も込められているのだろう。

 ただ、来年のリオデジャネイロ五輪へ向かう日本チームにとって、メダル獲得が大きかったのはもちろん、デュエットフリーでメダルを逃したこともプラスとなった。もしそこでもチームと同じように、すんなりメダルを獲ってしまったら、選手たちはそれが当たり前のような気持ちになっていたかもしれない。納得できない形とはいえ、メダルを逃したことで選手たちは全員、悔しさとともに"油断してはいけない"と危機感を感じたはずだ。

「私たちはこれまで、納得できない悔しい負けを何度も経験してきている。それを繰り返してやっと、本当に強い国と認められるようになるんです」と井村コーチは言う。

 今回選手たちの心の中に残った嬉しさと悔しさが入り交じった複雑な気持ち。そんな割り切れない思いこそが、日本シンクロ復権をリオデジャネイロ五輪ではっきりと記すための、大きな原動力になるに違いない。

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