【水泳】未完成の渡部香生子、それでもメダル5つの衝撃 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by (C)Takao Fujita / PHOTO KISHIMOTO

 その渡部を指導する竹村吉昭コーチは、この大会の成果をこう語った。

「100mはいい記録が出た時の泳ぎの感じをまだつかめていなくて安定感がないですね。特に前半で相手に行かれると自分のレースが出来なくなってしまうところがある。そのあたりはもう少し確実に力をつけなければいけないところなので、100mはまだまだかなと思っています」

 200mについては「最初は不安があったけど、予選で前半を少し突っ込んでみる泳ぎをしてからいい時の映像と比較したりして細かな修正点を指摘して、ウォーミングアップの時にはいい感じになってきたんです。それでレースにも集中していけたと思う。100mがダメでも200mではきっちり優勝できるのは去年と大違いですね」

 まだ気持ちの波はあるが、渡部が去年と違うのは、試合の時には自分でガタッと落ち込みそうなところを支えられるようになったこと。竹村コーチも、「6日間の大会でもしっかりと気持ちを切り換えられ、最終日に自己記録を狙って行けるようになったのは、本人も自信になったと思う」話した。

 その要因としては昨年の秋から納得いく練習が出来るようになったことと、今年2月のジュニアエリートA選抜のオーストラリア遠征に行ったことだろう。ニューサウスウェールズオープンに出場し、リレーも含めて11種目17レースを泳ぐ3日間を過ごす経験をしたのだ。

 渡部本人は「最初に竹村先生から(日程を)言われた時は『ホントに?』 という感じだったけど、プレッシャーが少ない試合だったので、楽しんで自分なりに頑張ればいいのかなと思って臨みました」というが、竹村コーチの意図はこうだった。

「数多くレースをやると、いい種目もあるけど、ダメな種目も出てくるはずなんです。そういう時に以前は自分からメゲたり崩れたりしていたことに、どれだけ立ち向かっていけるか。あそこでそれだけのレースをこなして、それなりの結果を出せたことが本当に自信になっていると思います。今回も最終日の200m個人メドレーの決勝前のアップではタイムが少しあがってきたので、『行けるかもしれないね』と言ったら、彼女もそういう気持ちになっていましたから」

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