【水泳】入江陵介がこだわった「記録への挑戦」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by (C)Takao Fujita / PHOTO KISHIMOTO

 100mでは0秒10まで迫り、200mも0秒75差(日本記録は高速水着時代に入江自身が出した1分52秒51)。4月の日本選手権では「これまでは高速水着の記録はあえて見ないようにして『ノーマル水着のベストを』と考えていたが、やっとあの記録から目をそらさないで向き合えるようになってきた」と話していた入江。シーズン最後の大会で残した好成績で、自己記録更新も間近なのだと本気で思えるようになった。

「ほかの種目を見れば高速水着の記録を超えている選手も多く出ている中で、背泳ぎだけがいつまでもその頃の世界記録のままでいるのは問題なので……。100mに関しては世界記録まであと0秒4まで迫っていて、狙えるチャンスも出てきたから、狙わなければいけない立場だと思います。200mも自分の高速水着の記録の1分52秒51を超えればリオデジャネイロ五輪の優勝にも近くなると思うので、本気で狙いたいと思います。スタッフにもまだ伸びしろがあると言われているから、来年、再来年にはそれを実現したいですね」

 今回のアジア大会ではいつも指導してくれている道浦健寿コーチが代表チームに入っていなかったため、合宿などではほかのコーチの指導を受けた。その中で普段はやっていない自由形の練習にも取り組み、それが効果的だったと感じた。帰国してからは道浦コーチと話し合い、練習方法の見直しをしたいという。

「去年くらいからは個人メドレーもやっているけど、楽しめているしいい記録も出ている。最近は自由形も練習で自信が付いてきているので、代表レベルではないけど、これからは楽しみながらの強化の一貫として、個人メドレーと200m自由形もやってみたいと思っているんです」と明るい表情を見せる。

 このアジア大会では萩野の活躍が各国から注目されたが、平井伯昌コーチは以前から「エースはひとりだけでなく、複数いることがメダル量産の必要条件だ」と話していた。

 入江も08年北京五輪に初出場した時から「北島康介のあとを次ぐ次代のエース候補」と注目されていた選手で、今後エースになりうる存在だ。一時はそれを意識過ぎて空回りしていたが、今年になってようやく歯車が合いはじめた。

 今大会自信を深めた入江は、2016年リオデジャネイロ五輪へ向け、エースとして戦いの場に立つ準備を、着々と進めている。

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