【水泳】勝利を自信に変えて。萩野公介が見せた底力 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by(C)Yuya Nagase/PHOTO KISHIMOTO

 今シーズン、決勝では最初のバタフライを気持ちよく泳ぎながらも速く泳いで、残りの3種目に繋げる、と考えているのだが、その最初のバタフライはベストラップより1秒以上遅い56秒36で通過だった。いつもなら差をつける得意な背泳ぎでも「今日はストロークがきつかった」といい、抜け出すことができず、逆に中国の黄朝昇に抜かれて2位に。平泳ぎは少し抑えて1分11秒23のラップで泳ぐと、トップの黄には0秒81差でもうひとりの中国勢の楊之賢や瀬戸大也にもかわされる4位での折り返しになった。

 だが自信を持っている自由形では50m手前で先頭に追いつくと、ターン後、一気にスピードアップ。ぐんぐん差を広げると最後の50mは200m個人メドレーの時のラップを上回る26秒91でカバーし、2位に2秒以上の差をつけてゴール。記録も4月の日本選手権で出したアジア記録に、0秒14及ばないだけの4分07秒75で圧勝したのだ。

「いつもとは違うレース展開でしたが、その中でも新しい展開で1番を取れたのは良かったと思います。いいところが1割で悪いところが9割という感じだったけど、タイムを見た時は4分7秒までいったんだという驚きもありましたね。このくらいのタイムを出すためだけだったら、こういうレース展開でも出るけど、これから4分5秒台、4秒台を狙うためには、前半からもっと積極的にいって最後の自由形でも今日くらい粘れるようにしないとダメですね」と萩野はレースを振り返る。

 このアジア大会、専門種目の個人メドレーではともに安定した勝利を見せたが、それ以上に収穫だったのは自由形での好成績だ。彼を指導する平井伯昌コーチは「今日のようにいろんなパターンで勝てるようになるのは必要だし、経験としては記録を出すということも必要。でも今の萩野には、それ以上に勝ち続けることの方が大切だと思う。その意味でもパンパシに続いて優勝したのは大きな財産になるし、その中でも200m自由形で勝ったことは大きい」と話し、こう続ける。

「今のアジアを世界のレベルと比較した時、最も高いのは孫楊や北京五輪とロンドン五輪の2個ずつメダルを獲っているパク・テファン(韓国)がいる自由形中距離だと思っていました。そこで400mでは敗れて2位になったが200mでは優勝と、世界のトップスイマーである彼らと対等に戦えたことは萩野にとって大きな自信になるはずです」

 大会初日の200mの萩野の優勝タイムは、日本記録の1分45秒23。彼自身が「勝ったとはいえ、孫選手にもパク選手にも記録ではまだ離されている。これからもっと練習をして、ふたりに認めてもらえるように頑張りたい」と話したように、彼らのベストタイムはともに1分44秒台。レースで萩野が勝利できた理由のひとつとして、パクをマークしていた孫の心の隙を萩野がついたことだった。

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