【シンクロ】王国復活への第一歩。縮まった中国との差

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by YUTAKA/AFLOSPORTS

 まずは目の前に立ちはだかるアジアのライバル中国の背中を追い掛け、追い抜く。その先には、世界のトップに君臨するロシアやスペイン、台頭してきたウクライナとの戦いが待ち受ける。すでに2年を切っている2016年のリオデジャネイロ五輪へ向けて、それほど時間的な余裕はない。だからこそ、身近なライバルと同じ舞台で試合をしていく中で、どうやって戦い、対抗していけばいいのかを実感することが大事なのだという。

「(現場復帰後初めての国際大会となった)アジア大会はあくまでもアジアですから、まだ次のワールドカップがあるので、私たちの目標達成(世界でのメダル獲得)に向けた強化はこれからがスタート。今回、一番苦心したのは、このチームのメンバーを決めるときで、どの選手をどこに配置するかという試行錯誤の5ヵ月間でした。日本選手はお互いに探って合わせる協調性がある反面、仲間同士で遠慮して思い切りのある演技ができない欠点がある。だからリフトでは、丁寧にするのではなく、仲間を信じて瞬間を狙って思い切り上げなさいと送り出しました。これまではリフトでは何もできなかったが、やっと飛んでくれるようになり、滞空時間が出るようになったので、これからはひねりなどの技を加えるチャレンジができる。さらに、スピードやパワーをもっとつけて最後まで泳ぎ切る力をつけていくことが必要です」

 いくつもの課題を挙げながらも、明るい展望が見え始めている井村コーチ。お家芸と言われたかつての威光を取り戻し、「シンクロ王国」再建に大きな期待がかかる。その第一歩がこのアジア大会から始まった。

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