【水泳】見えてきた世界記録。渡部香生子の平泳ぎが確変中!

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

「去年のヨーロッパGPは風邪をひいて戻ってきたけど、今年は出る前に少し体調が悪かったのに向こうで戻して帰って来たから、体力がついたのは確かですね。練習は目標がその日によって違うから、それをしっかりやり切って1日1日を大事にして積み上げようと言ってやってきただけです。腕と足の全体をうまく使えるようになっていると思うけど、本当は8月のパンパシフィック選手権くらいで5秒台の日本記録を出したいなという気持ちでいたので。僕が考えるパワーにはまだいってないけど、それでもああやって5秒台を出せるのはすごい能力だと思いますね」

 竹村コーチはこう話すが、この5秒台で得意とする平泳ぎ200mへの期待が膨らんできたのも確かだ。渡部自身も「ヨーロッパから帰国したばかりの状態で、苦手意識を持っていた100mで鈴木さんと泳いでこのタイムを出せたというのは、今後に向けてもいい経験と自信になった。パンパシフィック選手権や9月のアジア大会へ向けてはすごくいい状況だと思う。200mを次に泳ぐ時は、日本記録(2分20秒72)の更新を視野に入れていきたい」と話す。

「彼女の場合は集中力の高さもあるから、試合の方が練習より遥かにパフォーマンスも良くなる。その点ではヨーロッパGPもいい練習になったと思う」と竹村コーチは評価するが、9日間でヨーロッパGP3大会では8種目に出場して15回レースを泳ぎ、中1日のジャパンオープンでは8レースをこなすハードスケジュール。それについて本人は「トレーニングの一貫という気持ちで臨んでいるし、夏へ向けてはもっとやらなければいけないと思うが、昔よりは体力的にも成長している実感はある」と振り返った。

 世界の女子平泳ぎのレベルは近年急速に上がり始め、100mは高速水着のころに出た1分4秒台の世界記録を塗り替え、メイルティテが2013年に1分04秒35まで伸ばしている。また200mもロンドン五輪でレベッカ・ソニ(アメリカ)が初めて2分19秒台に入ると、昨年はリッケ・ペダーセン(デンマーク)とユリア・エフィモワ(ロシア)がそれを上回り、世界記録はペダーセンの2分19秒11になっている。

 100mで4秒台が見えるようになって世界のトップまであと一歩と迫った渡部が、200mで2分20秒台、19秒台へ踏み込むのは時間の問題だ。世界の進化の流れに乗るための準備は、着々と整い始めた。

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