【世界水泳】瀬戸大也と萩野公介。金メダルが生んだ黄金世代のライバル物語 (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 だが最後の種目である400m個人メドレーでは予想外の結果が待っていた。今大会は2011年世界選手権と12年ロンドン五輪で優勝しているライアン・ロクテ(アメリカ)が出場せず、4月の日本選手権で4分7秒61を出している萩野が世界ランキングでも飛び抜けた1位。泳ぎを確認したという午前の予選は4分13秒80の4位通過だったが、決勝では最初のバタフライからトップに立つと、後続を突き放すレースを見せた。

 平泳ぎを終える時点では、予選を「予定したタイムとドンピシャ。泳ぎと感覚が合っている」と4分12秒96で2位通過をしていた瀬戸大也が、2秒19差を一気に詰めてきて先行。それでも最後の自由形に入るとすぐに萩野が再逆転。後続を離してふたりで競り合う状況は、日本勢のワンツーフィニッシュを予感させるものだった。

 だが「自由形に入った時はもう体に疲れがきていた」という萩野は、ラスト25mから急激に失速。得意のバタフライも抑え気味に入って後半勝負にかけていた瀬戸に突き放されただけではなく、追い上げてきたチャス・カリシュ(アメリカ)やロンドン2位のティアゴ・ペレイラ(ブラジル)などにかわされて5位に沈んだ。

「情けないですね。この種目で金メダルを獲るのを一番の目標にして、そのために多種目に出場したわけだから。自分がベストを出したらしっかり優勝することが出来たので、まだまだ連戦をする体力がなかったということですね。多数の種目に出場して、それぞれのスペシャリストと戦うことが出来たし、この400m個人メドレーでは大也が一生懸命いい色のメダルを獲ってくれたことだけが救いです」と、萩野は悔しそうな顔をする。

 また平井コーチは「予選では瀬戸の平泳ぎがすごく良かったけど、そこを見ていなかった僕と萩野が良くなかった。僕も含めてちょっと心に隙があったと思います」と反省の弁を口にする。

 前日レースが無かったことも影響した。15レースを終えてからの400m個人メドレーだったため、「勝たなければいけない」という思いで疲れを警戒し、午前中の予選を抑えてしまった。それで感覚が狂った面もあったのではないか、と平井コーチは言う。

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