【水泳】18歳・山口観弘が世界新記録樹立。北島康介を超えるその能力 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 中村博之●撮影 photo by Nakamura Hiroyuki

「以前は最初からラスト50mと同じようなテンポで泳いでいたが、大きくゆっくり泳いでもスピードが出るというのを体得できている。ただそれ以上に、以前は前半を1分04秒台で入るなど自分の中で壁を作っていた。それが寺川綾や加藤ゆか、上田春佳だけでなく、北島やアレキサンダー・ダーレオーエンとも一緒に練習をする機会もあり、『自分の考えはまだまだだな』と壁を考えなくなったんだ思います」(平井コーチ)

 そんな世界トップの選手たちと練習をしてから臨んだ今年4月の日本選手権は、山口にとって初めてとなる本格的なシニアでの戦いだった。しかし、結果は100、200mとも3位で五輪代表を逃し、それが悔しかった。さらに同い年の萩野公介がロンドン五輪で銅メダルを獲得したことも刺激になっていたという。

「ここで自己ベストを出しておけば、1、2年後には自ずと世界記録を出せると思っていたので……。ただ(世界新)記録は出したけど、まだトップ選手と戦って出した記録ではないから。それに最終的には最初の100mを1分0秒台中盤で入りたいから、そのためにももっとパワーを付けて100mでも58秒台を出したい」

 そんな山口を平井コーチは「100mをもっと速くさせたいなど楽しみはいっぱいあるが、まだこれから。来年の日本選手権や世界選手権でどうなるか。本当に期待されてからが勝負だと思う」と言う。

 一気に爆発し、予定より2年も早く世界記録保持者になってしまった勢いを、来年以降にどうつなげるか。それがこれからの山口にとっての、大きな課題になるはずだ。

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