【水泳】入江陵介、宿敵に勝つも銀メダル「今はこの順位に胸を張りたい」 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 準決勝後に入江はこう語ったが、彼を指導する道浦健寿コーチの思惑も同じだった。「決勝の前、最後に本人と話したのは、『入江が来るぞ、だからターンをしっかりやらなくては』と相手に思わせるようなレース展開ができればいいな、ということでした」と語った。

 そして迎えた2日の決勝――。入江は、思惑通りのレース展開を見せた。最初の50mはロクテに0秒03遅れるだけで折り返し、100mも0秒22差。ロクテが速いと想定済みだった100~150mも、ターン後のバサロキックで少し差を開けられただけで、その後は再びその差を詰めて食い下がる。150mは0秒23差の3位で折り返した。

 ラスト50mは意地の戦い。ロクテと入江の競り合いに、昨年の世界選手権3位のタイラー・クラリー(アメリカ)が割り込み、3人がほぼ一線に並んで競り合う展開になった。

 その中から、終盤になって抜け出したのは、昨年の世界選手権で入江に次ぐ2位のクラリーだった。彼は最後の50mを28秒48で上がり、1分53秒41でゴールした。

 最後の5mでロクテを追い抜き、0秒37差の2位でゴールした入江は、しばらくの間、電光掲示板を見つめていた。

「最後の50mはロクテ選手と競り合って本当にいい感じで行けたので、『1』という文字を見たかったんです。クラリー選手の調子がいいのはわかっていたし、レーンがロクテ選手の奥だから姿は見えなかったけれど、近くにいるのはわかっていました。ラスト5mは本当に無我夢中で泳げたし、その前には落ち着いてラストスパートもかけられた。またもや2位で悔しいという思いもあるけれど、今できる100%のレースはできたから。本当に力を出し切っての2位という成績なので、今はこの順位に胸を張りたいですね」

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