【水泳】北島康介100m5位。それでも200mメダルの可能性はある!

  • 折山淑美●文・取材 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

「金メダルじゃないにしろ表彰台へ上がることを考えたら、今の僕にできるのは今回のレースだったと思う。結果は残念だったけど、精一杯のレースはできた。それに世界記録を出したキャメロン(・ファンデルバ)の泳ぎは素晴らしいと思うし、今回一緒にレースができたことをすごく誇りに感じますね」

 こう話す北島は、北京後の休養から再び泳ぎ始めた時、新しい泳ぎを作り上げようと考えた。それは腕の掻きや足の蹴りのどちらかに比重を置くのではなく、バランスよく両方を使い、なおかつそれ以外のつなぎも総合的に意識する泳ぎだ。それこそがかつてよりも速く泳げる新たな道だと考えたのだ。

 その方向性の正しさは、今年4月の日本選手権100mの、58秒90の日本記録で証明された。

 だが、その泳ぎは難しさも併せ持っていた。すべてを総合的に意識しなければいけないとなれば、どこか一部が微妙にズレただけでも狂いが生じてしまう。日本選手権で仮完成をした泳ぎを五輪に向けてさらに仕上げようとしたことで、それぞれの部品が微妙にバランスを崩した。それが今回の結果だった。

 そう考えれば今回の惨敗も、北島康介というスイマーがさらに速く泳げるようになろうとする過程の、ひとつの失敗例に過ぎないのかもしれない。それはある意味、先のある敗戦ともいえる。

 北島は明るい表情でこう言う。

「100mに関しては結果に結びつかなかったけど200mには、厳しいだろうけど、まだチャンスが残っているので。だから最後まで粘りますよ。僕を観て応援してくれている人たちもそうだし、今いる日本チームのメンバーに対しても頑張る姿勢を見せるのが、今の自分がしなければいけないことだと思いますから」

 100mで惨敗しながらも、200mでは泳ぎを修正して攻めのレースで銀メダルを獲得した昨年の世界選手権。その再現を果たそうとする北島の意識の中には、「諦め」の文字はない。

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