【水泳】初の五輪で銅メダル。高校生スイマー・萩野公介の恩師が語った「大物感」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 萩野は学童と中学、高校で次々と各年代の記録を更新し続けてたスーパージュニアだ。「学童記録を出した選手は早熟だから大成しない」というジンクスもあるが、小学3年の時から指導する栃木県の『御幸ヶ原SS』の前田覚コーチの指導で乗り越えてきた。昨年こそ、国際大会代表選考会前に高熱を出して、大会を棄権したために世界選手権代表になれなかったが、今年の日本選手権では200mと400m個人メドレーの2冠を獲得して、五輪代表を決めた。

「今回は背泳ぎのラップタイムを1分1秒台でまとめているので、このタイムが出たと思います。4月の日本選手権では1分3秒かかっていたから。その分とあとは平泳ぎも上手く泳げるようになったので、力を残して最後の自由形につなげることができるようになって、それが4分8秒につながったのだと思います」(萩野)

 決勝前には平井ヘッドコーチから「4分8秒台くらいは出せそうだ」と言われた。だからといって気負う様子もなかったと平井ヘッドコーチは振り返る。「そのタイムが出なかったら4分09秒28のフェルプスに負けているところだった」と萩野は言うが、そういう記録への恐れがないことも、新人類や天才と言われる所以(ゆえん)かもしれない。

 萩野は「シェー選手(ハンガリー)が予選落ちしたので、もしかしたらメダルが獲れるかもしれないと思ったけど、緊張はしませんでした。むしろ、初めての大舞台だから、そんなに緊張してなかったのかな、と思っています」と平然と答える。

 五輪合宿などでは、小学3年から指導を受けている前田コーチが選手団に入っていないため、平井ヘッドコーチの指導を受けたという。その中でバタフライの後半50mをビルドアップするような感覚でいけということと、平泳ぎでは頑張って泳ぐ時は肘を引き過ぎると抵抗が大きくなるから、そこを修正しろということを教わった。それをすぐに形にして五輪という大舞台で出せてしまうのは、彼の吸収力の大きさを物語っている。

「今日も男子400m自由形では中国の孫楊と韓国のパク・テファンのアジア勢が1、2位になっているから、もう『日本人だから』というのを無くさなければいけないと思うんです。その点、荻野は小学生の頃から強くて、ジンクスもスケールの大きさで乗り越えてきている。だからリオで金というだけではなく、世界記録を狙うような選手になってもらいたい」と平井ヘッドコーチは期待を寄せる。

 大舞台で一気に成長して銅メダルを獲得してしまった萩野。8月2日に決勝の200m個人メドレーでは、今季世界ランキング7位につけている。フェルプスや400m優勝のロクテや2位のペレイラ、予選を流して落ちたシェーとの再戦でどんな戦いをするのか。持ちタイムの比較では400mより厳しいが、爆発力と若さで、どこまで突っ走るかを確かめたい。

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