【水泳】寺川綾が語るロンドン五輪への思い。「頂点を狙いたい」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 山本雷太●写真(人物) photo by Yamamoto Raita

「綾は短い距離の方が好きだった。練習でも自分の得意な種目なら楽しいけど、200mとなると持久系の練習もけっこう取り入れなければいけないので、すごい苦痛に感じていたというか。それでも200mに出るから練習をしなくてはいけないし、周りからも頑張れと言われるし......。そういうジレンマもあったようです」

 3歳からイトマンSSで水泳を始め、選手コースで力をつけた寺川は、小さなころから才能を認められた選手だった。だが本人は「放し飼いにされていた感じだったから、勝手でしたね」と笑う。練習に行っても気分が乗らなければ、「今日は泳ぎません」と言って、他の選手が頑張っているのを尻目に、プールサイドをデッキブラシで掃除していたこともあった。

「高校の頃は練習に来ない時期もあったし、学校でも『今年は海外遠征に行けないかも。日本でお留守番だわ』なんて言ったりして。でも試合になると必ず、彼女は練習以上の力を出してしっかり泳ぐんです」と、川辺はその当時を振り返る。

 だがアテネ五輪代表選考会の04年4月の日本選手権、100mは中村礼子や稲田法子に敗れる4位。五輪代表の座を獲得したのは、中村に次いで2位になった200mだった。

 川辺は「アテネ前は何回も、『もう辞める』という言葉を綾から聞いた」と言う。

 寺川も「正直辛かったですね。みんなに200mの方が向いていると言われても、『そうじゃないのに』と思っていたし、期待されても『何でそんなにプレッシャーをかけるの?』と思っていました。突然いろんなものを背負って、『自分が好きでやりたい水泳はそんなんじゃないのに』と、追い詰められて追い詰められて、ギリギリのところで泳いでいたような感じでした」と振り返る。

 寺川は初めての五輪を前に苦しんでいた。

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