【水泳】入江陵介、日本の大黒柱としての決意。「目指すのは金メダルだけ」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●撮影 photo by Fujita Takao


 その意欲は4日の100m決勝でも表われていた。前半の50mを世界選手権より0秒22速い25秒76で入り、ゴールタイムも世界選手権より0秒07速い52秒91。それでも入江は納得していなかった。

「前半行ききれなかった部分もあったと思うし、後半ちょっと泳ぎがバタついたところもあったので......。普通に泳げば大丈夫だと思うけど、周りからそう言われるのがすごいプレッシャーでもあるんです。スタートで滑ってしまったらなどと余計なことを考えてしまって」

 こう話す入江が目標にしていたのは、世界選手権優勝のラクールが3月に出した52秒7以上のタイム。今回、タイムで優位に立って相手にプレッシャーを与えておきたかったのだ。

「100mは0秒22差と近くなっている実感はあるし、(北島)康介さんと組めるメドレーリレーでメダルを獲りたいという気持ちもありますから。それに五輪では100mの方が先にあるから、そこで勢いをつけなければという気持ちで100mの練習もしっかりやってきたんです」

 もちろん100mでも金メダルを狙いたいという思いとともに、世界選手権ではスタートから一度も前に出られずに完敗した200mで、前半から先頭に立てるようなスピードをつけてロクテに対抗したいという思いもある。

 そのために、以前はそれほど重視していなかった筋力トレーニングに取り組んで体力アップに励み、苦手だったスタートやターン後のバサロの改善に取り組んできた。そして、その効果は着実に現れている。

 だがその分、テンポの異なる100mと200mの泳ぎの切り替えが難しくなってきたともいう。実際、100mと200mではテンポやストローク回数などの違いがあるため、両方に出場する選手は世界でも少ない。だがその違いを克服するのも、自分の務めだと入江は思っている。北島康介の後を継いで日本チームの大黒柱になるという目標があるから、入江は圧勝での五輪代表権獲得にも不満顔なのだ。

 指導する道浦健寿コーチは「できれば200mで1月(オーストラリア選手権で出した1分54秒02)の記録を上回って欲しかったけど、全体的には合格点だった」と評価する。それは彼と入江が日本選手権を、五輪への「通過点」と捉えていたからだ。

「シーズンの中で2回ピークを作るよりも、五輪だけに合わせる方がいいと思ったんです。それで3月28日まではしっかり練習をさせていたんです」

 疲労も残る状態で、「完璧に仕上げて臨んだ大会ではなかった」と言う道浦コーチは、「課題のスタートとターンで日本の選手にひけをとらなくなったのは収穫。泳ぎは元々いいから、ロクテも力はあるけど、ある程度ついて行けるのでは」と本番での勝負を想定する。

「目指すのは金メダルだけ」という決意。入江は笑顔を見せなかった日本選手権で、その思いをさらに強くした。

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