【水泳】マイペースな15歳。一気に成長した渡部香生子がロンドン五輪出場へ前進 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●撮影 photo by Fujita Takao

 渡部は元々、背泳ぎと個人メドレーを専門にしていた選手だった。だが中1の秋に肩を痛めたため、肩への負担が少ない平泳ぎを本格的に始めた。するとトントン拍子で記録を伸ばし、一気に世界と戦えるところまできたのだ。

「普通なら周りの期待が急に大きくなるとプレッシャーを感じて自分の泳ぎができなくなる選手が多いが、彼女はそれがない。そこが最大の持ち味なんです」と麻積コーチは言う。たしかに、多くの記者に囲まれても物おじすることなく、マイペースで話す渡部の姿は、ある種の「鈍感力」を感じさせる。

 今回の大会で渡部が目標にしたのは、このところ課題にしているターン技術を磨くことだった。25mコースの短水路は苦手にしているが、ターンの回数が多くなる分「いい練習になる」と考えたという。

「まだ(ターンは)うまくいかないことが多かった」という渡部だが、初日の100m個人メドレーとこの日の200m平泳ぎは、ともに終盤で逆転しての優勝。しかも、最近の練習では身体が沈む泳ぎになっていたというが、大会ではしっかり浮かせて泳ぐことができており、本番での強さも発揮した。また、今回の結果で身長が伸びても泳ぎが崩れていないことも証明できた。

「周りの期待に気持ちを左右されないように、しっかりと自分をコントロールして泳げたと思う。鈴木さんに勝てたことも、4月の日本選手権へ向けて自信になった」

 高速水着禁止以降の世界の女子平泳ぎをみれば、100mでメダルをとるためには1分05秒台が必要とやや厳しいが、渡部が得意とする200mは、レベッカ・ソニ(アメリカ)が2分20秒台でダントツの記録を持つものの、2番手はユリア・エフィモワ(ロシア)の2分22秒22で3番手は2分23秒台と手が届くタイムだ。

 まずは、世界選手権代表の鈴木や、200m日本記録保持者の金藤理絵との代表争いを勝ち抜かなければいけないが、本番で実力を存分に発揮できる渡部なら「五輪へ出られれば一気にメダル」という期待を抱かせてくれる。

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