【プレイバック2024】鈴木優花が振り返る「史上最も過酷なコース」パリ五輪女子マラソンと女王ハッサンの存在 (2ページ目)
【女王ハッサンから受けた刺激と学び】
レース後、女王ハッサン(右)とともに。鈴木にとって貴重な時間となった photo by JMPA――優勝したシファン・ハッサン選手(オランダ)とゴール後に会話を交わしていましたが、彼女についての印象は?
鈴木 ハッサン選手はトラックレースの5000m(予選・決勝3位)、10000m(決勝3位)でトータル3本走った上でオリンピックのマラソンに臨んでいたので、もともと持っている土台、力について底知れないものを感じました。3月の東京マラソンの時は、私は観客として見ていて、レース後に話す機会があり一緒に写真を撮ったのですが、パリ五輪のレース後にもまた一緒に撮ってもらいました。
――底知れぬ力とは、どういう部分ですか?
鈴木 メンタルの部分ですね。あのレベルまでいくとほかの選手たちも楽しみつつ、タイトルがかかったレースでは周りのことを気にせず結果に対して真っすぐなんですけど、ハッサン選手が一つ違うのは、オリンピックのような大舞台でも周りの選手とも親しくレース前に話しをしたり、レース後に健闘を称え合うスポーツマンシップを忘れないんです。どこかリラックスしている。もちろん、自分の限界に挑戦する姿勢は人一倍あると感じました。
――実際に一緒に走ってみて、ハッサン選手との距離感は?
鈴木 まだまだ天と地ほどの差があると思います。トラックで何回も(世界大会の)タイトルを取っていますし、私はマラソン一本で取り組んできて、ようやく世界で入賞というところまできましたが、ハッサン選手はトラックで培ってきたスピードとタフさ、力があって、マラソンでの金メダルにつながったのではないかと思います。そこは全然違います。
――ハッサン選手はじめ、今の世界のトップ選手はトラックでスピードを追求してからマラソンに移行する傾向が強いです。鈴木選手はマラソンをベースに戦っていますが、そういう選手たちと対等に戦うには、どういうアプローチを考えていますか。
鈴木 私の特性を考慮しつつ、トラックのベースは必要になってくると思います。トラックで追い込んで、秒(自己ベスト)を縮めていくタフさ、スピードのベースは必要だと感じています。そうすれば全体のペースに余裕が生まれるので、マラソンにつながっていくと思います。
――例えば田中希実選手(New Balance)、廣中璃梨佳選手(JP日本郵政グループ)とトラックで勝負することもイメージにありますか。
鈴木 そうですね。ハッサン選手もそうですが、もともと持っているスピードの力があるからこそマラソンをやりきれていると思うので、メダルを狙っていくなかでトラックのスピードをつけないと勝負はできないと思います。(離れていて)後ろから見たわけではないですが、ハッサン選手の(パリ五輪マラソンの)ラストスパートはトラックレースのものだと思うので、(映像などで)あれを見て、より感じました。
つづく
●Profile
すずき・ゆうか/1999年9月14日生まれ、秋田県出身。大曲高校入学後に陸上競技に本格的に取り組み、3年時にはインターハイ出場を果たす(3000m予選落ち)。大東文化大学入学後に長距離ランナーとして成長を遂げ、トラック、駅伝で活躍。大学卒業前の2022年3月に、初マラソンとなる名古屋ウイメンズマラソンで女子日本学生記録となる2時間25分02秒で5位。2度目のフルマラソンとなったパリ五輪代表選考会MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で1位となり、オリンピック代表に内定。3度目のマラソンとなったパリ五輪では6位入賞を果たした。実業団では1991年東京世界陸上選手権2位、92年バルセロナ五輪4位のマラソン実績も持ち、指導者としても多くの日本代表を育て上げてきた山下佐知子コーチに師事している。
著者プロフィール
牧野 豊 (まきの・ゆたか)
1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。
2 / 2

