箱根駅伝18位の立教大に足りなかったもの。上野裕一郎監督「今頃、精神論かよと思われるかもしれないですけど...」

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 時事

立教大・駅伝監督
上野裕一郎氏インタビュー
後編
前編を読む>>「当日のメンバー変更は何がメリットなのかピンとこない」

 立教大、55年ぶりの箱根駅伝は、往路20位、復路16位、総合18位に終わった。前評判では、シード権を獲得できる戦力があるチームとして注目されたが、1区から出遅れてしまい、復路もなかなか思うように挽回することができなかった。選手はもちろん、上野裕一郎監督も指導者として初めての箱根だったが、今後に向けて収穫、課題などいろんなものが見えてきたようだ。

立教大は箱根駅伝で総合18位という結果に終わった立教大は箱根駅伝で総合18位という結果に終わったこの記事に関連する写真を見る──走る箱根と指導する箱根では、大きな違いを感じましたか。

「まったく別モノでしたね。選手の時は、自分の走りでチームに勇気を与え、流れを変えられたりするんです。でも、監督の場合は、選手を送り出したら何もできないですし、その頑張りをうしろから見ているだけ。そういうなか、選手が必死に頑張っている姿からは勇気をもらいましたし、来年はもっといい感じで走らせてあげたいという気持ちになりました」

──監督車の経験はいかがでしたか。

「モニターとか何もなく、経過がわからないので、TVerを見ていました(笑)。持ち込んだものはストップウォッチと大学のエントリ―シートです。そこに各選手の5キロごとのラップを書き込んでいました。これは来年、参考にするためです。声かけは、その場で思ったことを主に言っていました。主務からは5キロ、10キロ、15キロで各区間の前後の選手とのタイム差を教えてもらって、選手に『前と18秒差だよ』とか、そんな感じで伝えていました。前が見えても何秒差なのかわからないですし、余裕がある選手には、48秒差のところを40秒と言ったり、メリハリをつけていました」

──声かけのシーンで印象に残っていることはありますか。

「2区で國安が東洋大の石田(洸介・2年)選手と競ったところがあったんです。その時、酒井(俊幸)監督が『うしろから國安君来たよ、エース対決で負けるなよ』って声かけしていたので、かぶせるように『大丈夫、エース対決でお前は勝てる。勝てるぞ!!』と声かけをして、抜いた時には『よっしゃー勝ったぞ!!』と叫んでしまいました。やっぱり勝負に勝って、ひとつでも前(の順位)で襷を渡すのはすごく大事なことなので、選手をその気にさせる声かけは重要だと感じました」

──上野監督にとって初の箱根は総合18位に終わりました。

「改めて箱根は難しいなと思いました。2日間、監督車に乗りながら『なんでこんなにラップが遅いんだろ』、『なんで力どおりに走れないんだろ』と思っていました。100%の状態を作っていっても、それを出しきることができない。うちのチームにとっては初めての箱根ということもあると思うんですが、たぶんみんな、60%ぐらいしか力を発揮できていない。それは、他大学にも普通にあることだと思うんですけど、やっぱり考えているようにいかないことのほうが多かった。一方、今回、優勝した駒澤大は質が高い選手が全員パーフェクトに走った。そうなると、もうどうしようもないですね」

──今回の結果を受けて、今の立教には何が必要だと思いますか。

「根性と度胸ですね。今頃、精神論かよと思われるかもしれないですけど、僕は本番に負けない度胸が必要だと思っています」

──度胸は、どうつけていくのでしょうか。

「記録会とか、小さなレースに出てもどうにもならない。やはり関東インカレを含め、予選会、駅伝とか大きな大会に出て、自分のリミットを越えてギリギリの勝負を戦う経験を重ねることです。レベルの高い選手が揃って、部内の競争が激しいチームは、そういう大会経験に加え、ふだんから競技面とメンタルの両面で鍛えられて度胸がついていきますが、うちはまだまだそこまで競争も激しくはないので、なかなか難しいですが、やっていかないと......」

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