銅メダル獲得の北口榛花、最終投てきで逆転の裏にあった高校時代の自信「私は6投目もできる子だ」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFP/AFLO

自ら切り拓いてきた道

 今回のメダル獲得は女子フィールド種目として日本人初だった。その大きな原動力になったのは、日本選手権後、6月18日のダイヤモンドリーグ・パリ大会で63m13を投げて優勝しながらも、世界陸上前の事前会見で、「今大会はずっと入賞を目標にやってきた」とあくまでメダルと言わなかった冷静さにある。そう発言した理由をこう話す。

「正直、自分のなかではメダルと言うべきか、入賞と言うかをすごく迷ったのですが、東京五輪までは自分のなかでかなり速いスピードでの成長を求められた感じがしました。これからはゆっくりステップアップしていきたいという気持ちになり、『入賞をしたい』と言える自分になれたのだと思います」

 東京五輪は予選で62m06を投げて全体6位で通過しながらも、決勝では身体に痛みが出てきて55m42しか投げられず12位という悔しい結果に終わっていた。そこから冷静に自分を見つめ直すことができたのも、苦しい時期を経験し、自ら道を切り拓いてきた彼女だからこそだ。

 高校3年だった2015年に、世界ユース選手権で優勝して以降、期待されるようになった北口だが、2016年に日本大学に進んでからは右肘を痛めた上に、コーチ不在の時期もあって低迷した。そんななか、2018年の11月にフィンランドで開かれた、やり投げの国際講習会でチェコ人のセケラックコーチの指導に興味を持ち、メールで交渉した。コーチ不在を心配した高校時代の恩師から、「チェコの投げ方は北口に合うと思う」と言われたこともあと押しになった。

 2019年から指導を受けるようになると、5月には64m36日本記録を出して世界選手権(ドーハ)にも出場。その大舞台は6cm差で予選敗退となったが、10月には日本記録を66m00まで伸ばし、東京五輪もメダル獲得を期待されるまでになっていった。

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