箱根駅伝優勝へ東京国際大が順調な歩み。4年生の多くが経験者、トラックシーズンで新戦力も台頭 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 千葉 格/アフロ

トラックシーズンで新戦力が出てきた

 網走大会の5000mでは山岸柊斗(2年)が13分58秒31の自己ベスト、千歳大会5000mでは、木村海斗(2年)が14分02秒92で網走大会に続いて自己ベストを更新、牛誠偉(2年)も13分50秒28で自己ベストを更新した。また、佐藤棒紀(2年)は昨年、出雲駅伝で2区4位とルーキーながらすばらしい走りを見せ、初優勝に貢献、続く全日本大学駅伝後、故障して箱根駅伝に出走できなかった。今年3月には大腿骨の疲労骨折で離脱。5月末に練習を再開し、今回のホクレンが復帰レースになった。千歳大会でのタイムは14分06秒92だったが、「夏に向けていいイメージをもっていくためのレース」としてまずまずの手応えを掴むことができて、表情に少し余裕があった。

 千歳でレースを見ていた大志田監督は、うれしさ半分という表情でこう語った。

「山谷は、今回5000mに調子が悪いなりに出て、14分37秒かかって、何やってんだという見られ方をされると思うんですよ。そういうことはレースに出ないとわからないので、それを踏まえて今後どうするのかということですね。今回の収穫は、牛と佐藤ですね。木村も頑張りました。網走大会から千歳大会と中2日で普通は1本のところ、うちは2本出て、しんどい思いをさせたと思うんですけど、2本をどうまとめるのかというのを見たかったんです。みんなそれなりに結果を出してくれたのは大きいですね」

 中間層や復帰組のレース結果を見てもチーム力は確実に増しているのが見てとれるが、全体を俯瞰するとやはり上級生の充実さが伝わってくる。山谷は今、苦しんでいるが、夏明けには戻ってくるだろうし、丹所、ヴィンセントはさらに強くなっていくだろう。

「昨年の箱根駅伝は、4年生はひとり(野沢巧理)しか走れなかったんです。でも、今年は主将の宗像(聖)ら4年生の多くが箱根経験者で、彼らの足並みが揃えばかなりの力になります。その4年生を脅かす存在として牛、山岸や木村らが出てきたので、夏合宿にいい流れでいけますね」

 選手層は、確実に厚くなっていきそうだが、箱根制覇を目指す東京国際大の最大の懸念は山だ。前回、5区はルーキー(当時)の倉掛響が区間14位、6区の林優策(当時2年)は区間13位と苦戦を強いられた。この特殊区間をどうマネジメントしていくのか。

「まだ、山の計算はついていないですけど、昨年走った倉掛あたりがどうなるのか、ですね。夏合宿では、全体練習のなかに山用の練習も入れていくので、そこで出てくる選手がいればと思っています。ただ、特殊区間も含めてですが、他大学と比べることはしていません。うちは我々が目指しているオーダーが組めるかどうか、ですね。そのオーダーで自分たちが思うようなゲーム展開になれば総合優勝が見えてくると思っています」

 言葉の端々に大志田監督の自信を垣間見ることができる。

 今季のチームは、選手が揃えば相当に完成度の高いチームになりそうだ。もっとも選手を故障なく揃えるのが難しいのだが......。

 夏合宿は、例年と少し異なり、4年生は実業団合宿には参加せずに、チームに帯同して1か月、北海道で集中して行なう予定だ。

「4年生を残したのは、下級生に4年生の背中、取り組みを見せるためです。(伊藤)達彦(Honda)が4年の時の1年生が育っているのは、達彦たちの背中を見てきたからだと思うんです。そういうところは継承して、次に活かしていかなければならないと思っているので」

 丹所らは、大志田監督の考えを意識してチームを牽引していく。選手からは「3冠達成」という目標に向けて、自分たちがやるんだという意識がホクレンでの走りに感じられた。

 今年の東京国際大は、何かを成し遂げようとする気迫に満ちている。

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