箱根駅伝の全国化も地方大学は「現実的に厳しい」。1回で終わらなければ、中長距離の名選手が指導する2大学にも可能性 (3ページ目)

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato
  • photo by Kyodo News

早稲田の竹澤も指導者に

 一方の摂南大は、今季から北京五輪代表(5000m、10000m)の竹澤健介が専任講師として着任。陸上競技部のヘッドコーチに就任して、長距離強化を図っている。2020年11月には寝屋川キャンパスに全天候型400mトラックが完成。2023年4月には女子陸上競技部を発足して、女子駅伝も目指していく計画を立てている。
 
 竹澤は早大時代、箱根駅伝に4年連続で出場。2年時に"花の2区"で区間賞を獲得すると、3年時には大阪世界陸上、4年時には北京五輪に出場した。

 学生時代に「箱根から世界へ」を実現しており、人気もすこぶる高かった。竹澤の指導を受けたいと考えている高校生は少なくないだろう。関西圏には有力高校生ランナーも多く、竹澤の知名度と箱根駅伝の"魔力"があれば、全日本大学駅伝に一度も出場していない摂南大に好選手が集まってもおかしくない。

 また、駒大・大八木弘明監督、青学大・原晋監督など箱根駅伝を知り尽くしている名将が地方大学の指揮官になり、本気で箱根駅伝を目指すことになれば、学生長距離界の勢力図が大きく変わるかもしれない。

 一方で実業団のあるコーチは、「大学生をスカウトする立場からすると、別に箱根駅伝にこだわる必要はないかなと思っています。中長距離から上がってくる選手。たとえば高岡寿成なんかがいい例ですよね。関東とは別のアプローチで大学の4年間を強化することで将来につながることもありますから」と話している。

 現在、日本陸連の中長距離・マラソン強化委員を務める高岡寿成(カネボウ監督)は、龍谷大時代にスピードを磨き、4年時に(1992年)に5000mで日本記録を樹立。実業団に進んだ後に少しずつ距離を延ばし、2001年に10000m、2002年にマラソンで日本記録(いずれも当時)を打ち立てた。

 多様性が叫ばれる時代、箱根駅伝を目指すだけでなく、18~22歳の時期に適切なトレーニングをすることで将来につなげるような指導も必要なような気がしている。

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