女子短距離が熱い。日本選手権優勝経験者の復活とボブスレーから陸上で輝くニュースター誕生 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 それでも今回、試合前は不安もあった。

「前日、調整の時に左内転筋が内出血していたので不安だったんです。でもコーチやトレーナーさんとも話して、去年たくさん試合に出たなかでも、いい走りができたあとには内出血して、調子がよくなるという繰り返しだったので、プラス要因だと受け取ろうと思って。この段階で内出血するというのは、足がさらに強くなろうとしているのだと考えたのも、強みになったと思います」

 そんな前向きな気持ちがレースにそのまま表われ、優勝につながった。この結果で世界選手権のリレー代表へ向けて大きく前進したが、優勝とともに大会出場への思いも強かった。

「(世界選手権の開催地である)アメリカに父がいるので、そこで走りを見てもらいたいなというのと、祖母が他界をしてしまったので、優勝を空の上に捧げたいと思いました」

「将来的には10秒台を目指したいですが、まずは11秒3台を出せたので、ここから11秒2台にいくには何か必要かということをトレーニングで考えていきたい」という君嶋。現時点での女子短距離の主軸といえる兒玉が、最終日の200mで23秒34の好記録で優勝。短期間で不調から復調してきたことは大きい。さらに3年前の日本選手権女王の御家瀬も復活してきた上に、君嶋というベテランがここにきて台頭してきた。

 男子短距離陣は、東京五輪まで牽引してきた選手たちが思うような結果を出せていないが、女子の場合は、200mと3位になった東京五輪出場の鶴田玲美(南九州ファミリーマート)や、今回は故障で力を出しきれなかった青山の存在を含め、これからが楽しみな状況になってきている。

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