女子100mニューヒロイン候補の青山華依。東京五輪では「8番の人が出る」と言われ、日本選手権でのリベンジを目指す (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 弓庭保夫●撮影 photo by Yuba Yasuo

「まだまったく自信がない」

この記事に関連する写真を見る 柔らかな走りでスタートがうまい青山だが、前傾して加速する自分の走りを「ちょっと気持ち悪くて、好きじゃない」とも漏らす。

「自分がどういう走りをしているかよくわからないけど、今はスタートから出て後半逃げきるという感じです。中学の時は200mをやっていたから後半型だったけど、中3の頃から100mをやるようになってスタートの改善に取り組み、でも200mはあまり走らなくなったので前半型に変わってしまって。今は中盤から後半にかけてもう一度加速したいと思っているけど、それがどうにも難しくてできないんです」

 そんな青山を、伊東コーチは「まだいろんなことを経験させる年齢です。僕らが現役時代にやっていたことをやらせると、しんどくなってしまうので」と長い目で見ている。さらに「まだ相手を見て自分の順位を決めてしまうようなところもある。彼女の場合は国体やU18日本選手権で優勝しているが、インターハイでは勝てずに王道を歩んでいないから、まだ自信を持てていない面もある。自信を持てば学生個人のように圧勝できるし、東京五輪のリレーのような走りを200mの前半でやってくれたら、日本記録まで行く可能性はあると思っています」と言う。

 高校3年のインターハイが、新型コロナの影響で中止になった不運もあった。現時点では今季唯一の11秒4台を出しているが、日本選手権へ向けても「織田記念で先着した御家瀬さんも戻ってきているし、君嶋愛梨沙(土木管理)選手も好調だから」と弱気だ。そして「自信を持ってしまったら、記録が止まっちゃうかもしれないのであまりメリットもないと思います。けっこう現実主義で今の実力を重視してしまうので。11秒3とか2を1~2回出せれば多少は世界に近づけたと思えるだろうけど、まだ11秒4なのでまったく自信がないですね。多分、日本記録を出さないと本当に自信はつかないと思います」とあっさり言う。

 それでも今は、少しずつ欲も出てきた。それを確固たるものにするのは、日本選手権(6月9日開催)の好走と、世界選手権(7月15日開催)代表になることだろう。

「高校時代は量より質の高校だったし、私自身はサボり癖があったので(笑)。でも大学に入ってからは、他の人より足りないかもしれないけど、記録を伸ばしたいという気持ちもあるのでけっこうガツガツやっています。これからは200mももっとやらなくてはいけないのはわかっているし、大学を卒業して自立するようになってからが本当の勝負だと思うから、大学のうちに覚悟を持って死ぬほど練習をして、『限界までやる』というのは一度経験しなければと思っています。今までは自己記録もちょっとずつしか伸ばせていないので、一気にあげていきたいです」

後編に続く>>陸上にハマったきっかけ。「団体競技は苦手でした」

PROFILE
青山華依(あおやま・はなえ)
2002年8月26日生まれ、大阪府出身。甲南大学2年生。小学5年の時に陸上選手だった両親の影響で陸上を始める。大阪高校の2年生だった19年6月に、日本選手権女子100mで3位になり注目を集める。21年の東京五輪・女子4×100mリレーの日本代表として第1走者で出場し、日本歴代2位の43秒44をマーク。100mの自己ベストは11秒47(22年4月日本学生陸上競技個人選手権)、200mは23秒60(22年5月静岡国際陸上競技大会)、60mは7秒36(22年3月日本陸上競技選手権大会・室内競技)。身長167cm。

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