飯塚翔太、「本当に悔しかった」昨年を乗り越え優勝。「原点に戻る走り」で自己記録更新も見据える (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO SPORT

 東京五輪後は9月に入ってから徐々に練習ができるようになり、悔しさを胸に再び走り始めた。

 そして今年の静岡で好記録こそ出した。前半は練習の時のように70~80%で走ることを意識していたという。

「元々は前半にスピードを上げてしっかり走るイメージでしたが、春先に出場したオーストラリアの試合では、60mあたりから一気に疲れてしまった。そのあとの練習で、太ももを軽く痛めた走りを見直したら、手と足のリズムが噛み合っていないことに気がつきました。

 だから手と足のタイミングを合わせるというのをずっとやっていて、(6月の)日本選手権に向けてはその動きにスピードを乗せていこうという計画です。今回はその途中だから、予選も決勝も我慢をしてタイミングを合わせることだけに集中しました」

 犬塚には先行されたが、「世界はあのくらいのスピードでいく」と焦りはなかった。

「前半の走りが噛み合っていれば後半が楽になるなというのは最近実感していましたが、今日はそれを体現できたので後半はすごく余裕を持って走れたし、全体的な流れとしては自分のよさが出たと思う。今回はおそらく前半の100mは10秒6くらいだったので、それを10秒4台にまでしていけば自己記録も出ると思います」

 最後に今シーズンの目標をこう語った。

「今シーズンの目標は日本選手権で結果を出し、世界選手権に出場して決勝に進むことです。リレーは元々好きなので4継でもマイルでもどっちでもいいです。あと、アジア大会は2大会連続で表彰台に上がっていないのでリベンジもしたい。パリ五輪へ向けてはもちろん、いけるところまでいきたい。練習で体力はまったく落ちていないし、走り込みも元気にできています(笑)」

 今季、アメリカではサニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)が4月30日に追い風2.1mの参考記録ながら10秒08を出し、桐生祥秀(日本生命)も4月24日の出雲陸上競技大会では追い風2.1mで10秒12(公認は10秒18)を出している。

 子供の頃は色紙を手にして歩き回り、色々な選手からサインをもらっていたと笑う地元静岡のこの大会で、「原点に戻る走りができた」という飯塚も、久しぶりに4×100mリレーメンバー争いに割り込んできそうだ。

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