箱根駅伝6区の記録保持者が語る、走りのポイント。「序盤の上り5キロでどれだけ攻められるか。下りで怖がらずに走れるか」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 松尾/アフロスポーツ

 館澤は、倒れ込むようにしてゴールラインをきり、そのまま倒れ伏した。国学院大との差は、5秒差になり、青学大との差は2分ちょっとになった。

 57分17秒というタイムは待機所に戻ってから聞いた。

「正直、走り終えた直後は6区で自分がどんな走りをしたのかまったくわからなかったんですが、区間記録を更新してうれしかったですし、チームに貢献できてホッとしました」 

 驚異的な区間記録が生まれたわけだが、その代償は大きかった。館澤の足のかかとには血マメが広がり、足の指の爪が3本、黒ずんだ。よく6区を走り終えた選手が靴下を血で真っ赤に染めたり、足の裏の皮がベロンとむけたところを見せたりするが、そのくらい苛酷な区間なのだ。

 館澤が区間記録を立てたのが前々回大会だ。

 前回は花崎悠紀(駒澤大)が区間賞(57分36秒)を獲得したが、これまで6区で活躍してきた小野田勇次や今西駿介(当時・東洋大)といったタイプと異なり、館澤と同じ筋肉質のタイプだった。

「僕は、タイプやウエイトは関係なくて、6区に求められる特別な適性は5区よりは低いと思うんです。そもそも6区は各大学のエース級の選手が走ることは少ないように思われていますが、もしエース級の選手が走るとどのくらいのタイムが出るのかは想像がつかないですね」

 6区は、特別な適性があるというわけではないと館澤は語るが、では、そこで勝つためには何が必要なのだろうか。

「3つあって、まずは走力です。アップダウンがあってもペースを維持しながら走れる力を持っていることです。ふたつ目は度胸。最初の約5キロが上りですが、序盤ながらそこでどれだけ攻めた走りができるか。下りでは、いかに怖がらずに走れるかが大切です。3つ目は運です。6区は当日の気象条件にかなり左右されるので、雪や冷たい雨、路面凍結など厳しいコンディションになると、記録更新を狙うのが難しいレースになります」

 今回の箱根駅伝は、1万m28分台の選手が多く、レベル的には非常に高い。果たして、3つの条件をクリアし、館澤の区間記録を更新するランナーが出てくるだろうか。

「最初の5キロを踏ん張り、途中でスピードを落とさず、ラスト3キロをしっかりと動かす。ありきたりですが、それができれば区間賞を狙えると思います。ただ、区間記録の更新は、3つの条件をクリアしつつ、ベストな走りをしないと達成できない。正直、僕の区間記録はまだ抜かれたくない気持ちも少しありますが(苦笑)、抜かれるとしたら東海大の後輩たちに破ってほしいなと思います」

(おわり)
前編(3代目山の神・神野大地が語る5区のポイント)はこちら>>

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