マラソン神野大地がサブ10を達成。あえてトップのうしろにつかず「33キロ地点で、ニャイロに声をかけた」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 時事

【新たなシューズで結果が出た】

 もうひとつ、外的な変化が見られたのがシューズだ。

 神野といえばニューバランスだが、今回はナイキのヴェイパーフライネクスト%を履いてレースに臨んだ。写真や映像を見て、多くの人が「なぜ?」と感じたように思われるが、実は神野とニューバランスとのスポンサー契約は終了していた。

「ニューバランスとはプロになってから3年間、一緒に活動させてもらって感謝しかないですし、今も引き続きコミュニケーションをとらせていただいています。ただ、契約があることで(他社の)シューズを試せずに悩んだことも事実。これからMGCやパリ五輪を考えると、そういう状況だけは避けたかった。一旦契約をクリアにして、いろんなシューズを試したなかで今回レースで履くシューズも選択しました」

 神野が今後どのメーカーのシューズを履くかどうかはわからない。ただ、自分の選択に後悔しないためにこれからも履きたいシューズを履いてレースに臨むと言う。

【いざ、パリ五輪へ】

 メンタル的に安定し、シューズのこともクリアできた。MGCを獲得して、ここからいよいよパリ五輪にむけて本格的なスタートをきる。

「東京五輪の時はMGCの出場権を獲得してから半年でMGC本番だったので、準備期間が短くて、結果を出すためにもうちょっと時間がほしいと思っていました。今回は早いタイミングでMGC(の出場権)を獲れたので、ここから2年弱、MGCで勝つために何をすべきなのか考えて練習のプラン、レースプランを考えていきたいです」

 ストレスのないよい笑顔だった。神野がこれまで結果が出なくても努力し続けられたのは、箱根駅伝で結果を出し、3代目・山の神と称号をもらい、またあの時のような興奮と感動を味わいたいと感じたからだ。だから、どんなに苦しくてもつらくても高みを目指してやってきた。サブ10は通過点、箱根の時と同様に、ひとつ壁を越える度に神野は、また強くなっていく。

FMヨコハマ『日立システムズエンジニアリングサービス LANDMARK SPORTS HEROES

毎週日曜日 15:30〜16:00

スポーツジャーナリスト・佐藤俊とモリタニブンペイが、毎回、旬なアスリートにインタビューするスポーツドキュメンタリー。
強みは機動力と取材力。長年、野球、サッカー、バスケットボール、陸上、水泳、卓球など幅広く取材を続けてきた二人のノウハウと人脈を生かし、スポーツの本質に迫ります。
ケガや挫折、さまざまな苦難をものともせず挑戦を続け、夢を追い続けるスポーツヒーローの姿を通じて、リスナーの皆さんに元気と勇気をお届けします。

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