東京五輪で大活躍、広がる田中希実の夢。800mでは「来年、日本女子初の1分台も狙いたい」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 大学進学は、学んだことを競技に還元している選手がいることを知り、自分もそうしたいと思ったからだという。

「ゼミの石井好二郎先生(スポーツ健康科学部)は、勉強してちゃんと結論が出たことを競技にリンクさせて次の世代に残してほしいと考えていると思いますが、私の場合は今のことをやらないと次が見えてこない性格なので、自分のことで一杯いっぱい(笑)。先生の言っていることもまだ、大会などで結果が出たあとに『あぁ、なるほど』と腑に落ちたりする感じです」

「勉強は苦手なほうですが、陸上競技以外の武器を持っておきたい」と自分の人生を考えた部分ももちろんある。

卒論は70年代中盤から80年代前半にかけて中距離からマラソンまで活躍したグレテ・ワイツ選手(ノルウェー・83年世界選手権マラソン優勝。女子初の2時間30分突破で世界記録を4度更新)のコンディショニングの体調チェックのデータを、自分の実際のデータと比較して有用性を確かめながら、より有効なチェックリストとデータを作り上げることをテーマに考察していく予定だ。

「自分のデータなので万人向けではないかもしれないけど、その一歩ということになればいいのかなと思っています」

 今年、自国開催の五輪という大舞台を経験した田中は、これからは海外の選手をライバルと考え、そんな選手たちからも意識される存在になりたいという思いが湧いてきたという。

「今大会、1500mで強い選手は5000mに出ても強いだろうなということを感じたし、5000mに絞っている選手も1500mを走れば速いんだろうなと肌で感じました。だからやっぱり両種目とも世界に通用する意識を持っていないと、結局は世界から離されてしまうことになる。だからこれからも両立にこだわっていきたいと思っています」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る