2021.08.08

男子4×100mリレー、「ポジティブに捉えた」9レーンでの失敗。どんなリスクがあったのか

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AJPS

 9レーンで走る利点は、アウトレーンだった2017年世界選手権で、多田がいい走りをしたように、彼の特性としてカーブの緩いレーンのほうが攻めの走りができることだ。さらに2走も直線からのスタートになってスピードに乗りやすく、3走もカーブの緩さを利用したいい走りができる。「前半をリードすることで内側のレーンの選手にプレッシャーを掛けやすくなるので、1〜3走で勝負を決めたいと思っていた」と土江コーチは話す。

 毎回、予選後のミーティングでは、バトンパスの課題のほか、個々の走りの修正もテーマにしている。今回は4走の小池が走り出す位置を予選の走りを踏まえて、これまでよりも3走寄りに少し縮めた。

 小池は「最近はどうやってトップスピードに乗るかと考え、後半の走りが課題かなと思っていたんです。でも土江コーチが、『走り出しから足をもっと回して全開でいったほうがトップスピードが上がる』というデータを出してくれて。それを最後のバトン合わせで試してみたら、非常にいい感覚でいけたので、思い切って1足長縮めて『桐生から逃げるつもりで行け』という指示通りの走りをしようと思っていました」と言う。

 予選後のチームの話し合いで、「ここまでなら伸ばせる」と設定したタイムは37秒50。予選では4チームが37秒台を出していたが、ジャマイカの37秒82が最高で他の3チームは37秒9台。アメリカがいなければそのタイムで優勝できると想定した。

 4走の小池のところから見えていた1走の多田の走りは、「走り出した瞬間に『速いな!』と思いました」というほどいいスタートだった決勝。そのバトンを受ける2走の山縣は9レーンの利点が過剰になり、いつもと同じタイミングで出たにもかかわらず、想像した以上に加速してしまったとも考えられる。土江コーチは「結果を見た後に、9レーンにはそういうリスクがあるということを、選手たちにアドバイスすべきだったところはあったと思いました」と認める。