「冬までE判定」から現役で京大合格。競歩で金メダルを狙う山西利和の受験と青春

  • 門脇 正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori
  • photo by Kyodo News

文武両道の裏側 第3回
陸上 男子競歩 山西利和選手(愛知製鋼)
前編

 近年、日本勢の躍進が続く陸上競技・競歩。2019年の世界陸上ドーハ大会で、「男子20km競歩」「男子50km競歩」ともに日本人選手が金メダルを獲得するなど、東京五輪でも大きな期待が寄せられている。

 学業とスポーツを両立してきたアスリートに、「文武両道」の意義、実践法を聞く連載企画『文武両道の裏側』。第3回に登場するのは、京都大学工学部を卒業した経歴を持ち、前述した世界陸上ドーハ大会で「男子20km競歩」を制した山西利和選手。前編では、小中高時代の「文」と「武」を中心に振り返ってもらった。

東京五輪で金メダル獲得が期待される男子20km競歩・山西利和東京五輪で金メダル獲得が期待される男子20km競歩・山西利和
―― 現在、"競歩王国"と言われるほど日本の競歩が強くなりましたが、山西選手はその理由についてどう考えていますか?

「これはどなたかが言っていたことですが、長いスパンで振り返ると、(2001年から)インターハイの種目に競歩が採用されたことが大きかったと思います。もう少し中期的な話をすれば、近年、陸連(日本陸上競技連盟)が主催する合宿にジュニア世代や高校生世代が参加できるようになるなど、若い選手が大学や実業団の選手たちと同じ環境で練習する機会が増えました。そうした陸連の強化方針が実を結んだという側面もあると考えています」

―― 競歩(50km競歩)は陸上の中でも、最長距離、最長時間(男子の世界記録は3時間32分33秒)という過酷な種目。とはいえ、例えばマラソンと比べると、注目度、認知度という点で及ばないように思います。そのあたりのギャップについて、どのように考えていますか?

「まあ、なんと言うか......、(競技の)時間が長すぎるのはあるかもしれません。選手としてやっていて楽しいスポーツですし、知っている人にとっても見ていて楽しめるとは思いますが、初見の人に、『(50km競歩を)今から3、4時間歩きます。見ていてください』とはなかなか言いづらいですよね。

 一方、僕たち選手側が、競歩の魅力を伝えることを、そこまで意識してこなかったのもあるのかなと。ただ、競歩の魅力を知ってもらうことを、難しいと思っている選手が多いのも事実だと思います」

―― 人気が高まっていけば、いずれ多くの人がランニングの代わりに競歩をするようなブームが訪れることもありえますよね。

「そういうブームが、うーん......、来たりするんですかね(笑)」

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