神野大地、再起動。マラソン日本記録を目指して下した3つの決断 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 神野はプロに転向以降、ケニアやエチオピアで合宿をこなすなど、成長するためにいろんなことに挑戦していった。ただ高木からすると、そこで「自己満足していた部分があった」と見ていた。

「神野は自己管理能力が高い選手だと思っています。プロになってからもMGC出場やアジア選手権優勝といった成果を残せているのは、努力の成果でしょう。プロ転向やアフリカ合宿など、あえて困難な道にチャレンジしてきた行動力も尊敬します。ただ学生時代はどうだったのか。もっと泥臭く練習をしていたんじゃないかなと思うんです」

 では、なぜその泥臭さを神野は失ってしまったのか。

「箱根でスターになって高い注目を浴びながら競技を続けるなかで"山の神・神野大地"としてカッコよく振る舞わないといけないという意識が生まれて、原点とも言える泥臭さが薄れてしまっていたんじゃないかなと。その点は僕の責任でもあります。

 3年前に神野と活動し始めて、競技面においては遠慮していた部分があった。びわ湖マラソンのあとに神野に伝えた言葉は、藤原さんにコーチをしていただいているなかでは踏み込み過ぎた発言だったかもしれません。それでも伝えるべきだなと思っていました」

 高木は硬い表情でそう語った。それに対し神野も、そのことを薄々感じていた。

「プロランナーになってからケニアに行ったり、エチオピアに行ったり、挑戦していることに満足感を得たり、ケニアに行ったから大丈夫だとか、そういう気持ちになっていた部分はあったと思います。本来の僕は誰よりも泥臭く練習して、そこを突き詰めていくことで自信をもってスタートラインに立ち、走ることができていたんですが、なんかスマートに結果を出しにいこうと思ってしまって......」

 そして、神野は大きな3つの決断を下した。

「今後、いろんな迷いがなくなるように泥臭い練習をどれだけやれるか。これまでの練習が間違っているとは思いませんが、これから新たな取り組みに挑戦したり、いろいろ変えていこうと思ったんです」

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