平均タイム13番目で箱根駅伝2位。創価大は「速さ」ではなく「強さ」を磨いた

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato
  • photo by AFLO

 翌日、創価大は朝8時ジャストに芦ノ湖をスタート。3強のうちで最も上位の3位だった駒澤大とは2分21秒差があった。6区と8区で駒澤大に詰め寄られるも、7区の原富慶季(4年)と9区の石津佳晃(4年)で引き離す。特に石津のパフォーマンスは、今回の創価大を象徴するものだった。

 今回9区を走った選手の中で、石津の10000m自己ベストは15番目(29分34秒46)だったが、7人の28分台ランナーを抑えて区間賞を獲得した。区間記録にあと13秒まで迫る区間歴代4位の好タイムで突っ走り、2位の駒澤大とのリードを3分19秒とした。

 しかし、最終10区で首位から陥落する。榎木監督は「2分あれば逃げ切れる」と読んでいたが、小野寺勇樹(3年)は区間20位と苦しみ、残り約2kmで駒澤大に大逆転を許した。それでも、4区途中から140km以上も首位を独走してきた創価大の"快走劇"は、見る者の心を揺さぶっただろう。

 前評判は高くなかったが、12月に実施した30秒時差スタートでの15km単独走では、前年チームの3番目のタイムを11人がクリア。前回1区で区間賞に輝いた米満怜のタイムも8人が上回った。

「"米満が8人もいるチーム"なので、みんな自信を持ってくれたと思います。私は『タイムで走るんじゃなくて人が走るんだ』ということを選手たちに言い聞かせてきました。相手が10000m27分台の選手だから勝てないのではなく、その場にいる選手が走るわけだから、自分の走りに徹すれば27分台の選手にも勝てるチャンスはあります。1~9区までの選手は、そういう走りをしてくれたと思います」(榎木監督)

 シューズの進化もあり、10000mの記録はかつてないほどに上がっている。その中で創価大は「自分で走る」ことを大切にしてきた。

「人の後ろについてタイムを出すのではなく、自分たちの力でレースを作ってタイムを出せるように指導してきました。失敗もありましたけど、どの試合でもチャレンジすることを忘れなかったことに成長があったのかなと思います」

"速さ"よりも"強さ"を求めてきた創価大の大躍進は、今後の箱根駅伝を変えるきっかけになるかもしれない。

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