有力校が失速した箱根駅伝。総合2位・創価大躍進の舞台裏 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AJPS/PICSPORT

 さらに、11月に気温20度のなかチームで行なったハーフマラソンのトライアルでは、1時間3分台が10人以上と、他校と同等に戦える実力があると選手たちも自覚するようになった。

 特に、前回は当日変更で出番なしという悔しさを味わった三上の成長は大きかった。5区を志望していた彼は、11月21日に箱根で行なわれた激坂最速王決定戦で優勝し、上りのスペシャリストとしての自信を深めていた。

 榎木監督は、往路3位以内へ向けてチームのトップ5を起用することを決めていた。

 1区には、どんな展開になっても冷静に対応する福田。2区は1万mを27分50秒43に伸ばしたムルワを置くことで、先頭争い加わる構想だった。4区に嶋津を起用したのは、3区の葛西とともに4~5番手を維持して5区の三上につなぐことができれば、確実に3位以内に入れるという計算があった。しかも大会本番は、有力校の失速に加えて、葛西の区間3位、嶋津の区間2位の激走もあって予想以上の展開になり、往路優勝を手に入れたのだ。

 翌日の復路で創価大を逆転する可能性があるのは、2分21秒差の3位だった駒澤大と、3分27秒差で5位の東海大と見られていた。「総合優勝は考えていなかったですが、復路スタートの朝に他校の監督から『優勝のチャンスは少ないから、できるときに(優勝)しておいた方がいい』と言われて、少し意識しました」という榎木監督。復路にもそれなりの自信を持っていて、「9区の石津が終わった時点で2分差なら逃げ切れるかもしれない」と考えていた。  

 復路はその榎木監督の狙いどおりの展開となった。6区の濱野将基(2年)は自分の走りだけに集中して区間7位の58分49秒。駒澤大には1分13秒詰められたが、原富慶季(4年)が7区で再び差を広げた。

 そして、8区の永井大育(3年)が区間8位の走りながらも駒澤大に22秒詰められるだけで粘り、9区につなぐ。9区の石津は区間賞獲得の走りで、区間新記録にはあと13秒にまで迫っていた。その石津にはこんな思いがあった。

「前回は前の選手と5秒差でスタートしたにもかかわらず、なかなか差が詰まらないので弱気になってしまい、逆に55秒差まで開かれてしまいました。その悔しさを晴らすために今回は最初から突っ込まなければいけないと思い、この1年間は数字には表われない勝負強さを身につけようと練習をしてきました」

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