神野大地が語る「箱根5区の攻略法」。山の神はいかにして生まれるのか (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by AJPS/AFLO SPORT

---- ランナーとしてはエース区間の2区で勝負したいという気持ちがあったのでは?

「それはなかったですね。その年のチームの目標が箱根駅伝優勝でした。それを聞いた時、最初は『えっ優勝?』と思ったんです。僕が2年の時は5位で、3年になった時の4年生は高橋(宗次)さんをはじめ、そんなに強い4年生ではなかった。でも、みんなが居場所を見つけるために努力して、チームがすごく変わってきた。優勝するためなら監督に言われた5区で走ろうと思いました。たぶん、シード権争いぐらいのチームならエース区間で勝負したいと思ったかもしれないですけど、個人の目標よりも優勝の方が大きいですから」

---- 5区に必要な能力とは、どういうものでしょうか。

「たとえば、単純に坂ダッシュが速いだけでは、箱根の山では通用しないと思います。1キロの上りで『よーいドン』で速いのとも違う。一番大事なのは、きつくなった時にもう1歩、2歩粘れるかどうか、そのメンタルの強さでしょうね。足や心肺機能を高めていくのはもちろんですが、気持ちの強い選手が5区を走るのに適していると思います。

 あと、山は自分のキャパを超えない走りをしないといけないんです。一度でも限界を超えてしまうと、もう失速しかない。後半の距離と自分の調子を考えながら、自分のキャパを超えないギリギリのラインでレースを進めていくのを見極める能力が5区には必要かなと思います」

 神野は3年時、5区をスタートすると先頭を行く駒澤大を抜いた。44キロの軽量を生かし、体全体を使った走りでスピードが落ちることはなかった。2位の明治大学に4分59秒の大差をつけ、チーム史上初の往路優勝に貢献、「金栗四三杯」を受賞した。この時から5区は23.1キロになり、柏原竜二(東洋大)の区間記録(76分39秒/23.4キロ)の更新ではなく、神野は5区で新しい記録をつくったのである。

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