箱根駅伝のスターが実業団の監督となり
見えたもの「そろそろ改革しないと...」

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 現在、陸上にはマラソン、100m、そして駅伝という人気コンテンツがある。なかでも箱根駅伝は正月の風物詩となり、多くの人が楽しみにしているスポーツになった。社会人には、正月にニューイヤー駅伝がある。早稲田大を長年、指揮し、箱根駅伝を経験してきた渡辺監督から見て、ニューイヤーはどんなふうに見えているのだろうか。

「やはり、箱根との違いをすごく感じますね。箱根駅伝は、コンテンツなんですよ。選手個人や大学を応援するために見る人も多いけど、さらに多くの人が『箱根駅伝』を見るためにテレビを見ているんです。それは大きいですよ。箱根を経験した社会人の選手は、箱根であれだけ応援してくれたのに、なぜニューイヤーは盛り上がらないのだろうと思っていると思います。正直、多くの選手を含め、私もニューイヤーがこのままでいいとは思っていないです。今はスポンサーがついて、テレビで放送されていますけど、この後、何年つづくのか。そろそろ改革していかないと今後、開催自体が厳しくなると思っています」

 だとすれば、どんな改革が必要だと考えているのだろうか。

「ひとつの案としては、まずシード権でしょうね。例えば、8位までがシード権を得られるなら、どのチームもまずは8位内を目指す。次は5位以内、そして優勝というように目標を設定しやすいと思います。開催時期をニューイヤーにこだわるなら大都市でやればいい。沿道のファンが増えますし、駅伝自体がもっと注目されます。魅力あるコンテンツにするには、駅伝を作る人たちがもっと努力していかないといけないですし、思い切って改革を引っ張る人が出てこないといけない」

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 渡辺監督は早稲田大を指揮し、結果を出していた指導者であるし、今は実業団のチームの監督に就いている。両方の世界を知り、知名度も高く、改革を発言していくのには、最適の人物だと思うのだが、改革のリーダーになる野心はないのだろうか。

「青学大の原(晋)さんは、競技実績がない中で結果を出して陸上界を変えるのは今しかないと、いろんな仕掛けをして改革をしているじゃないですか。でも、私は原さんとは真逆の性格なんですよ(苦笑)。どちらかというと、そういう人について改革をするタイプです。ひとりで大木に挑むタイプではなく、組織の中でバランスを考えてしまう。そういう一歩踏み出せないところが、指導者として甘いところなのかなって思いますね」

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